研究課題/領域番号 |
15K04330
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
岩橋 恵子 志學館大学, 法学部, 教授 (70248649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フランス教育改革 / 地域教育計画 / 子どもの修学リズム / 学校外教育 / アニマトゥール / アソシアシオン / 教育契約 / 地域教育共同体 |
研究実績の概要 |
本研究は、2014年新学期からフランスの全公立小学校で実施された修学リズム改革の性格を、以下の諸点において明らかにした。 (1)修学リズム改革は、従来の学校での修学時間24時間を、週4日から週4日半に分配する改革である。その直接的な目的は、1日の学校修学時間の負担を軽くすることである。だがより本質的には、修学時間に、芸術・文化・スポーツ等の学校外活動を公役務として市町村が責任をもって実施し、学校修学時間と学校外時間の間の教育的連続性を保障し、多様な活動を子どもに提供することにある。したがって、地域レベルの連携協力による地域教育計画(PEDT)の策定に最大の特徴がみられる。 (2)PEDTのあり方については、全国的に高い評価を得ている複数の小学校の事例研究を通して、成功の要因として次のような共通点がみられる。①教員やアニマトゥールなど教育アクターが子どもの時間調整への研修に取組み、子どもの修学・生活リズムへの理解が得られている。②子どもが常に省察の中心にいる実践を進めるリーダーがいる。③いずれも長年にわたり青少年の生活リズム調整(ARVEJ)や地域教育契約(CEL)等による地方自治体との連携の取組みの蓄積がある。④地域アソシアシオン活動が活発で協力が得やすい人的・文化的リソース環境がある。⑤教員とアニマトゥールの信頼関係が形成されているなどである。 (3)修学リズム改革にみられる施策は、歴史的には①1970年代からの子どもの学習リズム研究の蓄積 ②1980年代末以来の「子どもを中心とする教育」の政策理念の展開 ③地方分権化における市町村の多様な教育契約の展開 ④19世紀以来の学校外における教育活動の蓄積がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の文献資料収集・渉猟および現地調査により、現在進行中の修学リズム改革の現状およびその特徴についての基本的な把握はできた。また、改革を積極的に進めているいくつかの小学校および市町村との連絡体制も一定確保でき、地域教育計画(PEDT)の具体的な展開も把握することができた。 だが、昨年度遂行する予定であった修学リズム改革に内包すると考えられる歴史的ファクターの分析については、未だ概略にとどまっており、改革との関連分析まで至っているとはいえないため、さらに文献・資料の収集と渉猟・分析を重ねなければならない。とりわけ、現場の地域教育計画(PEDT)の分析によって明らかになった、PEDTに先立って実施されてきた1990年前後からの地域教育契約が、修学リズム改革だけでなくフランス教育改革全体においてもきわめて重要な位置を占めていることから、この点の解明を重点的に行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究は、主に次の点に力点をおいて進める。 (1)学校教員とアニマトゥール(学校外教育職員)の連携協力のあり方の視点から、修学リズム改革において準義務化された新学校周辺活動(NAP)の考察・分析を行う。NAPは市町村の責任において行われるため、市町村によって、活動形態においても教育領域・方法・内容も多様であるため、典型的な事例の調査研究を行うことによって、教員とアニマトゥールの連携協力の意味とそのあり方を分析する。他方で、公役務として追究されるそれらの実践を、修学リズム改革に内包する歴史的ファクターとの関連から分析し、その歴史的意義を考察する。 (2)学校内外の多様なアクターの連携協力運営の実態と役割を考察・分析する。そのため、修学リズム改革において各学校・市町村に課せられた地域教育計画(PEDT)策定内容(修学リズムおよび子どもの生活時間調整の実際、教育活動領域と目的、アクター間の連携と役割など)を通して、学校内外の連携協力の仕組みと役割を解明する。加えて、PEDTに先だって実施されていた各種地域教育契約との関連性を分析する。 以上の2点の考察によって、修学リズム改革の地域教育共同体づくりとの関わりの解明を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年2月に予定していた現地(フランス)調査が、他の業務と重なり実施できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年2月に予定していた現地調査を、今年度9月に実施する予定である。
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