研究課題/領域番号 |
15K04333
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研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
塙 武郎 大月短期大学, 経済科, 准教授(移行) (90434422)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 初等中等教育の財政システム / 学校区の資本改善計画 / 学校区の自主財源 / 学校区の一般財源保証債(GO債) / 学校区の予算編成過程 / 納税者と住民投票 / 学校区長(教育長)と学校長の権限 / 将来世代への教育費負担 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究成果は、主として、次の2点に集約される。 第1に、フロリダ州マイアミデイド学校区の財政構造と一般財源保証債(GO債)の基本スキームを整理・分析した。ここでは学校区の信用力を示す債務管理基金に投じる自主財源力が脆弱であることを与件とした中で、学校の新規建設等のための借入れの是非をめぐる住民投票が教育財政の自治を保障する大きな制度的要素になっていることを明らかにした。とくに実務面では、GO債発行の際の学校区独自の決議を要する資本改善計画(CIP)は、学校区の予算編成過程(自主財源の配分上)における最優先の存在となっていることがわかった。 第2に、同学校区の事例分析として、GO債発行のための住民投票で賛成を得て実際に借入れされた財政資金が、どの小中学校・高校の、どの資本改善事業に、どれだけの資金が投入されているのかを納税者や地域コミュニティに常に開示している点に力点が置かれていることを現地調査で明らかにした。将来世代への負担・負債となる学校区のGO債発行やその債務管理は、アメリカ教育財政の自治を育ませる役割を担っており、子をもつ親だけでなく高齢者を含め、広く学校区全体の納税者によって教育資本投資の必要性が共有される初等中等教育財政システムが形成されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、マイアミデイド学校区等を主たる事例分析の対象としたが、その分析はまだ不十分な部分もある。今後その作業を進めながら最終年度となる平成29年度の成果にむすびつけたい。
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今後の研究の推進方策 |
全米第4の生徒数を擁するマイアミデイド学校区は、ヒスパニック系の生徒の急増を背景に教育ニーズがますます多様化し、その意味で多額の教育財源を必要としている。一般基金の自主財源の確保が本来必要であるが、現状は慢性的な財源十分に直面し、学力向上の大きな壁となっている。これは、シカゴやニューヨークなど他の大都市マンモス学校区と共通する構造化した貧困問題と連動する大きな内政課題であるが、自主財源の制約というものが資本改善事業の制約となり、GO債の発行額を不十分なものにしている。今後は、学校区の予算編成過程の分析の一環として、学校区が自主財源不足を余儀なくされながらも、どのようにして信用担保を最大限に図っているのか、州の資本補助金の地域別優先度や州議会(州資本委員会等)での動向等についても分析したい。
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