研究課題/領域番号 |
15K04336
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研究機関 | 常磐会短期大学 |
研究代表者 |
卜田 真一郎 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (20353021)
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研究分担者 |
平野 知見 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10441122)
長澤 貴 鈴鹿大学短期大学部, こども学専攻 幼稚園教諭・保育士コース, 准教授 (20515134)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多文化共生保育 / 実践の多様性 / 多文化状況 / 人権保育 |
研究実績の概要 |
本研究は、多文化共生保育の実践の多様さを記述する枠組みの構築を目指した2014年度までの研究成果を踏まえ、当初の枠組みを精緻化することを目的としている。その際に、さまざまな種類のマイノリティにかかわる人権保育のさらに多様な実践をふまえ、精緻化の参考にする。なお、2014年度までの研究の成果である論文「多文化状況の相違による多文化共生保育実践の多様性のM-GTAによる検討」は2015年度に学会誌に掲載され、2016年度の日本乳幼児教育学会第14回学術賞を受賞した。 2016年度は、多文化共生保育やさまざまなマイノリティにかかわる人権保育実践の交流の場としての「多文化&障がい共生クロスプロジェクト」を特定非営利活動法人「ちゃいるどネット大阪」の協力のもとで立ち上げ、実践者と研究者と学生が集う場としての研究会を継続的に実施した。これまでに、民族・宗教・セクシュアリティの多様性に関わる保育の実践交流と実践課題の検討を行った。また、ゲストスピーカーを招聘し、ベトナムにおける日本語教育の実践、ドイツの移民政策、障がいとアートの取組、群馬県大泉町における多文化共生保育の実践や学習支援の取組、ドイツにおける多文化共生保育の実践、といった多様な話題提供を受けて議論を行い、実践を位置付ける為の見方を培った。 また、国際的な共生の課題である「保育現場におけるイスラームとの共生の模索」をテーマとした対話を、日本乳幼児教育学会大会のシンポジウムにおいて行った。 関連する課題として、外国にルーツのある保育者に関わる検討を実施した。三重県内における外国にルーツのある保育者および保育現場等の通訳者のネットワーク構築に着手するための聞き取りの機会を持つと共に、ネットワーク構築のための準備を行った。また、来日第二世代保育者のライフヒストリーと実践に関わる聞き取り調査をもとにした研究論文の共同執筆を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度から「多文化&障がい共生クロスプロジェクト」を立ち上げたことにより、活発な議論の場を確保することができ、『違いを尊重し、共生を実現する保育』をテーマとした共編著の執筆のための準備を整えることができた。また、学会等において「保育現場におけるイスラームとの共生」をテーマにした対話の場を持つことができたことで、国際的な共生に関わるテーマについての議論をするネットワーク構築に着手することができた。また、外国にルーツのある保育者に関わる検討についても論文執筆を進めることができた。 ただし、園の多文化状況の違いが、多文化共生保育に関わっての保育者が抱えている戸惑いや外国にルーツのある保護者への支援に与える影響についての聞き取り調査と、同様の内容に関わる質問紙調査については、データ収集は概ね終了しているが、分析及び論文執筆がやや遅れており、2017年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる2017年度は、下記の検討及びまとめを予定している。 「多文化&障がい共生クロスプロジェクト」での成果については、2016年度の成果を踏まえ、『違いを尊重し、共生を実現する保育』をテーマとした共編著として整理を行う。 保育現場におけるイスラームとの共生に関わっては、5月の日本保育学会で「保育現場におけるイスラームとの共生の模索」をテーマとする連続シンポジウムの二回目を実施すると共に、11月の日本乳幼児教育学会においては、ドイツの移民・難民の多い地域の保育現場からゲストを招聘し、ドイツにおける多文化共生保育の実践についての報告をいただき、保育現場におけるイスラームとの共生についての対話を深める予定である。 外国にルーツのある保育者のライフヒストリーと保育実践に関わる研究については、論文を発表すると共に、三重県内における新たなネットワーク構築を通じたデータ収集を予定している。 園の多文化状況の違いが、多文化共生保育に関わって保育者が抱えている戸惑いや外国にルーツのある保護者への支援に与える影響についての研究については、収集されたデータに基づく論文執筆を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
三重県における外国にルーツのある保育者のネットワーク構築が当初の予定より立ち上げ時期が遅くなったため、研究分担者の支出が予定よりも約6万円減額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度後半にネットワークが構築されたため、研究会等の開催が計画されており、2017年度で次年度使用額の支出を予定している。
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