研究実績の概要 |
本研究を開始してまもない2015年4月25日、首都カトマンズ盆地を中心に発生した大地震(M7.9)により、多くの死傷者や歴史的建造物の倒壊等、甚大な被害が生じた。本研究では農村女性の社会参加の様相について実証的に探求しようと研究計画を立てていたにもかかわらず、調査地の状況が大きく様変わりしてしまったため、急遽、大震災後の実態調査を行うこととなった。予定していた調査地の家屋の9割近くが倒壊してしまったからである。聞き取り調査を行う中で、被害は貧困層や低カ ースト層の女性に大きく負担がのしかかる不均衡な状況を生み出していていることが明らかになった。生活再建のために新たに就労の機会を求める人が増しているものの、女性は就労条件も悪く、劣悪な環境の中で低賃金労働に従事せざるをえない状況にあった。さらに、情報へのアクセスを促す体制づくりが急務であることも述べておきたい。本研究における具体的な研究成果は下記のとおりである。 NAGAOKA ed, Our memory and experience Gorkha Earthquake on 25th April 2015,SEFU, Nepal, 2017、「共に学び合う防災教育の必要性:ネパール大地震からの復興に向けて」、 国立教育政策研究所紀要、第145集、国立教育政策研究所 、(155頁~167頁)、2016年、 『ネパール女性の社会参加と識字教育:生活世界に基づいた学びの実践』(明石書店)、2018年2月。今後は、大災害を経験した社会における女性の社会参加を促すノンフォーマルな学びの促進に向けて、情報へのアクセスを促す活動に焦点を当て、その社会的意義を質的に検討するとともに、女性も情報へアクセスする術を理解し、学ぶことの重要性を問うていく必要がある。
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