研究課題/領域番号 |
15K04342
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末松 和子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20374887)
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研究分担者 |
尾中 夏美 岩手大学, 国際交流センター, 准教授 (50344627)
北出 慶子 立命館大学, 文学部, 教授 (60368008)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際共修 / 多文化共修 / カリキュラムの国際化 / グローバル人材育成 / 異文化間教育 / 高等教育 / 留学生教育の国際化 / 教授法開発 |
研究実績の概要 |
カリキュラムの国際化を屋台骨とした国際共修授業の教授法開発を推進し以下の成果を生み出すことが出来た。 1.国内外のグッドプラクティス事例研究:調査を海外の好事例研究に発展させ、オーストラリアのメルボルン大学、ラ・トルブ大学にて、多文化クラスや教員向け研修、教材開発についてインタビューを実施した。国内では立命館大学、名古屋大学等で引き続き事例研究を進めた。 2.研究成果報告を兼ねた国際シンポジウム準備:これまでの成果を振り返り最終年度の取組に反映させるシンポジウム「国際共修:留学生と国内学生の学びあいをデザインする」を2017年6月18日(日)に東北大学で開催するための準備を実施した。趣旨)国際共修の効果検証・体系的考察、学習成果を最大化する教授法の開発等における課題の共有と、カリキュラムや授業設計、国際共修を含む「Internationalization at Home」の専門家を国内外から招聘し海外と日本の事例を通して大学教育における国際共修の現状と課題、展望につき議論し学習効果を意識した国際共修のあり方を検討。 3.国際共修教本出版準備:本研究を進める中で国際共修授業の教授法に関心を持つ研究者のネットワークを構築できたのは大きな成果の一つと言える。これら研究者と教本出版に向け準備を開始した。構成は①国際共修の背景と理論、②事例に学ぶ国際共修(海外)、③事例に学ぶ国際共修(国内)、④国際共修の「デザイン」と「教授法」 4.国際共修科目の開発:東北大学にて「国際共修ゼミ」の開講クラスを拡充し2017年度に向けてさらに新規科目の開発準備にあたった。①日本語を教授言語とする科目:実施:24科目(2015年度)→28科目(2016年度)2017年度は32科目開講予定 ②英語を教授言語とする科目:実施:18科目(2015年度)→21科目(2016年度)2017年度は22科目開講予定
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に集中的に行った国内のグッドプラクティス調査にて国際共修実践者とのネットワークが拡充され自主的に本プロジェクトへの協力を申し出てくれたこともあり本年度は予定していた以上の成果を達成することが出来た。異文化・自文化理解教育、ディスカッション、アクティブ・ラーニング、課題解決型学習等を効果的に取り入れた国際共修授業の改革を目的とした研究調査を進めるにあたり本事業を出発点として国内の研究者で国際共修研究チームを編成しそれぞれが専門や強みを生かしながら作業を分担し協力し合いながら研究を進めることが出来た。東北大学のみならず、岩手大学、一橋大学、名古屋大学、神戸大学、立命館大学の研究者も参画するプロジェクトに発展させることが出来た。 また、比較的早い段階で来年度に向けて執筆する教本の校正を話し合う研究会を開催することが出来たため、課題や目標が明確になり、プロジェクトを大きく進展させることが出来た。 さらに、海外調査を通じてオーストラリアを中心とした国際共修先進国の研究者、実践者と情報共有できたため、授業のテーマ設定,学習者の目標,教材,指導言語,課題、評価方法、教育介入などを中心に情報交換を行い、調査の焦点の明確化や課題の所在を早い段階で確認できたことも本プロジェクトの進展を後押ししたと言える。海外の研究者との交流により、本プロジェクトで予定していなかった海外での著書の出版についても議論する機会があり、本プロジェクトが既に終了している再来年度の共同研究・出版についても構想を練ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査においてヒアリングを実施したオーストラリア大学関係者が、多文化教育先進国であっても、国際共修を含むカリキュラムの国際化が教育現場に普及しているとは言えないと証言している。内なる国際化を進めるためには、教育実践・研究両面で効果検証を行い大学等に働きかけながらも、政策提言につなげる必要がある。日本においては、グローバル人材育成事業やスーパーグローバル大学創成支援事業などの追い風が吹いているため、教育実践者および研究者でネットワークを構築し、継続して情報交換や共同研究を行えるプラットフォーム作りが急務と言える。 本プロジェクトをさらに発展させるために来年度は、国際共修の教授法を確立させる。まずは、海外から教育の国際化の専門家を招き国際シンポジウムを開催しこれまでの研究成果を振り返ると同時に今後の研究の在り方を整理する。また、本研究の集大成となる国際共修の教本的書籍を出版する。教本には、国際共修を取り巻く世界の潮流や政策、発展の経緯と国際共修の人間発達における効能や効果検証のみならず、国内外のグッドプラクティスを提示する。また、日本の高等教育機関における国際共修をマッピングし、教授法についても議論する予定である。とりわけ、教育介入や課題設定、評価方法については詳細にわたり方法論を展開し、共修実践者の授業改善のみならず、今後、共修の導入を検討している教育実践者の指南書となるような教本づくりを目指している。 さらに、国際共修を定着させるためにまずは東北大学に国際教育科目群を設置し国際共修科目を含む国際関連科目をまとめて学生に履修しやすい環境を整備、将来的に必修とするか副専攻を設けてすべての学生が国際共修もしくは国際科目を履修するカリキュラムの構築を目指す。 本研究で確立したネットワークをプラットフォームとして、来年度は競争資金を積極的に獲得し、研究を継続させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたシンポジウムの開催が講演者の都合で3月から次年度の6月にずれ込んだため招聘旅費・謝金、シンポジウム準備のための学生謝金および物品費の購入を次年度に繰り越す必要が生じた。講演者の予定変更については、オーストラリア、ラ・トルブ大学のBetty Leask教授と交渉を続けていたが、同氏が副学長に昇進しスケジュール調整が極めて困難になった。
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次年度使用額の使用計画 |
6月のシンポジウムではLeask教授の推薦による別の研究者の招聘が確定したので、現在開催に向け着々と準備を進めている。それ以外では、書籍の執筆と研究成果発信、海外の研究者との共同出版準備に向け計画を練り始めているが、シンポジウムの開催時に講演者と共同研究の可能性につき議論する予定である。
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