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学習福祉と移行的労働市場とを結ぶデンマークの生涯学習政策について，９月に実施した海外出張を中心に，理論と制度・政策の両面から研究を進めた。
９月の海外出張では，デンマークのオールボー大学およびロスキレ大学を訪ね，昨年に引き続き成人教育・生涯教育の分野で活躍する２人の研究者にインタビューを行った。豊泉が執筆中の本課題に関する論考について説明し，デンマークの生涯学習政策とその仕組み，その現状の評価について意見交換を行った。また，デンマークのフォーマルな成人教育を担う地域センターの一つであるロスキレ成人教育センターを２年ぶりに再訪し，所長及び２人の教員にインタビューを行った。事前に情報提供を依頼したデンマーク生涯教育の「プロファイル・モデル」について，さらにデンマークで進行中の生涯学習制度の制度改革の動きについて，現場から最新の情報を得ることができた。
以上のデンマーク調査研究から，生涯学習政策に支えられたデンマークの学習福祉と移行的労働市場の全容を把握することができた。一方，併行して研究を進めた日本の高校中退者の窮状と通信制高校の実態からは，後期中等教育の未修了にともなう青年期の移行の失敗が社会的排除に直結しかねない危険が明らかになり，日本における「学習福祉の欠如」が鮮明になった。これらの研究を踏まえて，本研究課題の現時点での暫定的な研究成果として，「後期中等教育の保障」という観点から，日本における保障の不在と対照して，デンマークの成人教育の仕組みと意義を明らかにする論考を勤務校の紀要に発表した。関連して，日本における「子ども・若者と暴力」の問題を，若者に広がる無力感・無能力感から検討した小論を教育系の雑誌に発表した。
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