本研究では,近年,柔軟な労働市場と高度な社会保障とを結合した「フレキシキュリティ」のモデルとして注目されるデンマーク福祉国家について,「学習福祉」と「移行的労働市場」という二つの観点から制度的特質を追究し,労働市場と結びついた生涯学習政策を中核とする福祉国家の現代的形成の意義を明らかにした。 また,高校中退者に対する後期中等教育の保障という観点から,デンマークの成人教育・生涯学習政策と対比しつつ,日本の成人教育・生涯学習政策の未熟さと限界について明らかにし,教育と労働市場の柔軟な移行,とりわけ青年期の学校から仕事への柔軟で非線形的な移行の保障に向けて課題を提起した。
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