研究課題/領域番号 |
15K04346
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
白川 優治 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (50434254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 奨学金制度 / 教育費 / 給付型奨学金 / 教育費負担の軽減 / 質問紙調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、教育費負担の新しいあり方と社会的支持を得ることができる教育費負担支援制度の在り方を提案することを目的に、教育費負担を家計から「移転」する可能性を、日本社会における教育費負担とそれを軽減する諸制度を歴史的、理論的、実証的に検証することを通じて、探索するものである。本研究が計画している歴史的検証、理論的検証、実証的検証のうち、平成28年度は、質問紙調査による世代間・地域間・階層間での教育費負担の「移転」可能性の実証的検証に中心に取り組んだ。 かねてから、学費負担の重さと奨学金制度の脆弱さが社会的・政策的課題とされてきたなか、平成28年度中には、給付型奨学金制度の創設が政治主導で提起され、平成29年度から部分的に実施されることなった。しかし、これまで大学生に対する国による「給付型奨学金」制度を持たなかった我が国において、どのような対象・制度の「給付型奨学金」であれば社会から支持されるのか、つまり、この制度に対する社会の合意範囲は必ずしも明らかではない。この動向を前提に、研究計画に沿って、高校卒業後の進路状況が対照的な2つの都道府県から無作為抽出した18歳以上の有権者を対象に、郵送による「教育費負担と奨学金制度のあり方に関するアンケート調査」を実施した(発送数2,000件、2017年1月発送・2月回収、回収率29.25%)。 調査結果の一例を挙げれば、奨学金のあり方について、「A.貸与制度」と「B.給付制度」のどちらが望ましいと思うかを尋ねたところ、前者に対しては45.1%(Aに近い+どちらかとえば)、後者に対しては50.9%(Bに近い+どちらかとえば)が支持している状況であった。奨学金制度の在り方に対して、その見方は分かれていた。平成28年度中には、研究成果として、調査結果の基礎集計を作成した(詳細な集計・分析結果は、平成29年度中に学会発表等で公表予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に基づいて、社会的支持を得ることができる教育費負担支援制度の在り方を明らかにするための実証的研究として、一般市民を対象とした質問紙調査を実施した。奨学金制度をめぐる政治状況や新しい給付型奨学金制度の在り方について質問紙調査で尋ねるたことで、社会動向に対応した研究成果を提示することができものとなった。このことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、本研究課題の最終年度として、研究成果の公表に努めるとともに、当初計画において計画していた、教育関係者や政治・行政関係者への質問紙調査について、経費状況を踏まえつつ、実施する。これまで進めてきた歴史的研究や理論的研究とともに、複数の対象の質問紙調査を通じて、複合的な視点から日本社会における教育費負担とそれを軽減する諸制度の在り方について研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画において、平成28年度に実証的研究として、一般市民、教育関係者、政治・行政関係者への質問紙調査を計画していた。平成28年度中に、給付型奨学金が具体的に国の政策課題として検討され、制度化されるという動向が生じたことから、新しい制度を踏まえた質問項目を策定するために、一般市民への質問紙調査を年度末に実施することとした。そのため、教育関係者、政治・行政関係者の調査は次年度に行うこととなり、経費使用計画も変更が必要となり、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、実証的研究の一部として、教育関係者、政治・行政関係者への質問紙調査を計画していることから、3か年の研究計画に沿った経費使用が可能である。
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