研究課題/領域番号 |
15K04347
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
王 杰 (王傑) お茶の水女子大学, 人間発達教育研究センター, 研究協力員 (80432037)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中国の大学 / 日本語学習者 / 進路選択 / 留学志向 / 英語教育 / 日本の留学生受け入れ / 廉価な労働力 / 留学生教育の質保証 |
研究実績の概要 |
平成29年度では、中国14国公立大学で収集した日本語学習者質問紙調査のデータを分析し、日本教育学会第76回大会(2017年8月、桜美林大学主催)に原稿「外国人留学生供給源の変動とその規定要因-中国の大学の日本語教育と学習者を事例に」を提出し、研究報告をおこなった。分析結果の一部を挙げると、まず今世紀初頭の中国における日本語学習者の急増は、高等教育の拡大が背景にあり、職業大学における日本語科の新設、既存の日本語科の定員増、さらに第二外国語として日本語を履修する学生の増加に起因する。近年の日本語学習者の減少に関して、小学校段階での英語教育の早期導入の影響が無視できない。日本語専攻生の進路をみる限り、近年中国の労働市場における「日本語ができる、日本のことがわかる」ことの優位性が大幅に低下していると推測する。また、日本語学習者の留学志向は非常に高いものの、大学の専攻が日本語であっても、高い英語力を生かして英語圏へ留学する学生が少なくない。これは近年、在日中国人留学生数が停滞した要因の1つではないかと推し量る。日本に限らず、非英語圏の留学生受け入れは英語、英語圏の優位性とどのように向き合うか、依然として課題である。同じデータのなかの授業料負担、授業料を引き上げる場合の進路選択の設問を分析し、2018年3月に日本高等教育学会第21回大会へ発表要旨「大学授業料引き上げのシミュレーション-中国14国公立大学の学生調査から」を提出した。6月初旬に研究報告を行う予定である。そのほか、文科省と学生支援機構が実施した各種留学生調査のデータを二次分析し、学術論文「少子化日本の外国人留学生受け入れの最新動向」を執筆し、査読を経て、台湾社会学会2017年度研究大会で口頭発表した。この原稿では、廉価な労働力であり消費者でもある留学生の教育水準の質保証を課題として提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国の日本語教育と日本の留学生受け入れに関するマクロの研究結果と、14国公立大学で収集した日本語学習者のデータを用いたミクロの分析結果をどのように統合し結論付け、理論化するかの課題がまだ残っている。研究成果を取りまとめるには、なお時間がかかる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られたマクロの研究成果とミクロの分析結果を取りまとめ、日本語学習者質問紙調査に含まれる家庭の経済力、授業料負担、奨学金利用、大学生活への満足度などの内容をさらに分析し、中国の日本語学習者の海外留学と在日中国人留学生数の変動をより多くの角度から考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集したデータをより多くの視点から分析し、その研究成果を国内外の学会で報告する予定である。次年度の使用額は主にデータ分析と学会参加に支出する。
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