本研究の主たる対象である欧州審議会(Council of Europe)が実施している教員研修プログラムであるペスタロッチプログラム(Pestalozzi Programme)は、加盟国の教員養成、研修支援等の組織と提携して教員の異文化間教育研修を行うとともに、教員の異文化間教育研修に関する理論的研究を行うものである。 平成30年度は本研究の最終年度として、これまでに行った調査研究、海外での研究発表と関係分野の専門家との研究交流をうけてとりまとめ、関連学会である日本比較教育学会において発表した。 とりまとめた知見は主に以下の点である。 ①多文化化が現実化した欧州各国において、従来の国民国家を想定した、単一文化的な国家、教育環境を念頭に置いた教員養成、研修は、大幅に変更せざるを得なくなっていること、②そのために新たな多文化社会状況を反映する多文化的な学校、つまり生徒も保護者も文化的に多様な背景を持つということを想定した異文化間教育訓練が教員には必須であること、③こうしたものへの対応として、欧州審議会ではペスタロッチプログラムにより、多文化社会の教員像、生徒に必要な諸能力像(コンピテンシー)の明確化がなされ、④これに見合った、具体的な教員研修プログラムや研修を支える理念が多く作成(試作)されていることなど、が明らかになり、実際の訓練プログラムについての資料をも収集することができた。
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