研究課題/領域番号 |
15K04350
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
見世 千賀子 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80282309)
|
研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 市民性教育 / オーストラリア / 日本人学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、オーストラリアで取り組まれている、グローバル・多文化市民社会に向けた知識ある行動的市民の育成のためのシティズンシップ教育と、日本の学校および海外の日本人学校におけるグローバル化・多文化化への対応と市民の育成に向けた取り組みがどのように展開されているのかを、理論、政策、実践の三側面から明らかにすることを目的とする。今年度は特にどのような実践があるのかに焦点を当てて調査を行い、取り組みの一端とその意義を明らかにした。まず、オーストラリアでは、事例として、シドニー(F小学校)およびメルボルン(T中等教育学校)で難民・移民を多数受け入れている学校を取り上げ、授業の観察および教員へのインタビューを行った。特に、中等教育学校では、難民・移民として入国した子どもたちに対して、「英語を追加言語として学ぶプログラム」を実施し、早い段階から英語と教科の統合学習を行っている。例えば、社会科の内容と英語の能力・スキルを身につける学習を通して、オーストラリアと諸外国とのつながりを理解し、オーストラリアでグローバル・多文化市民として生活をするという高い意識とスキルを身に着けさせようとしていた。このような取り組みは、日本におけるとりわけ外国人児童生徒の教育において示唆に富む。次に、海外の日本人学校の事例として、チェコのプラハ日本人学校では、現地の子どもたちが学ぶ内容を取り入れた教育が実践されていた。具体的な取り組みとして、例えば、ナチスドイツによるチェコへの負の遺産を通した平和学習が行われている。広島の学習とも関連づけ、平和な社会を形成する市民となるための資質・能力の育成をグローバルな視点から展開する試みとなっている。こうした現地の子どもにとって必須の学習内容を取り入れることは、現地で生きる意味を考えさせ、世界の人々と平和な社会を構築するグローバル市民の基礎をつくることにつながると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、オーストラリアおよび日本国内の学校、また海外の日本人学校において、どのような市民性教育の取り組みがあるのかについての事前の情報収集に時間を要しているため。次に、実践を明らかにするための訪問調査の調整が双方の都合により困難だったため。
|
今後の研究の推進方策 |
国内において、グローバルシティズンシップ、マルチカルチュラルシティズンシップの育成を行っている事例を継続して探す。在外教育施設(日本人学校、補習授業校)においてはグローバル人材の育成を視野に入れた取り組みが行われていることから、日本人学校等での取り組みも引き続き検討する。また、オーストラリアにおいては、オーストラリアの研究者の協力を得て情報収集を進め適切な事例を探り検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) オーストラリアへの訪問調査を2回、在外教育施設への訪問調査を2回予定していたが、日程調整がうまくいかず、今回は1回ずつしかできなかったため。 (使用計画) 次年度はオーストラリアへの訪問調査を2回、在外教育施設への訪問調査を2回予定している。
|