最終年度は、イギリスのリーズ市とロンドン市(近郊を含む)において、Multi-Academy Trust(MAT)に属しているアカデミーの中学校を複数校訪問した。公費維持学校からアカデミーへと移行した学校についての調査を過去2年間を通して行ってきたが、異なるMATに属していることによって学校現場と教員の研修および支援体制が多様化していることが判明した。さらに、従来EALを支援していたスタッフや団体が、地方当局(LA)に残って支援を続けているリーズ市のケースと、地方当局から独立した活動を行っているロンドン市周辺のケースを比較し、EMAG終了後に、イギリスの学校におけるEALへの学習支援がどのようなかたちで継続されているかについて調査を行った。 フランスについては、新規入国者の受け入れ単位であるUPE2Aについて、前年度にボルドー市とパリ市(近郊を含む)で行った調査に基づいて、インタビュー内容の書き起こしを行い、またそれらのインタビュー調査に基づいたケースごとの比較分析を行うことができた。 さらに、EUの教育政策が、経済成長戦略とともに、教育訓練2020の目標達成に向けて、そのガバナンスを形成しつつある側面について論文を執筆した。特に、教育訓練2020のベンチマークのなかでも、移民背景が深くかかわっている早期離学や外国語習得に関わる教育政策について、EUによって出される国別の勧告や統計を受けた加盟国による異なる対応を比較分析した。2012年より導入された教育訓練モニターによって、加盟国は、経済成長を促進するために教育制度および教育政策の改善を迫られており、今後2030年以降を見据えた戦略目標が設定するにあたり、現在の状況がどのように新たなベンチマーク設定に影響を及ぼすのかについて、考察を行うための下調べができたと言える。
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