教育がもつ公共的意義の解明という課題に応えるため、最終年度は①その成果を単著の書物としてまとめること、②その成果を国際学会において公表し、一部は英語論文としてとりまとめた。①については、教育の公共的意義を実証的に明らかにするために、教育経済学や近年の英米の実証研究を参照しつつ、日本のデータを用いて、教育の正の外部性や社会的意義を示した。その成果が中公新書『日本の公教育-学力・コスト・民主主義』である。 ②については、4月にAmerican Educational Research Associationの年次大会において、また3月にComparative and International Education Societyの年次大会において、いずれも別の在米韓国人社会学者との共同セッションを開き、そこでSSMデータなどを用いた計量分析の結果から、日本の教育システムの格差構造やその打開策などについて論じた。またそれ以外に、8月にはISA RC28でSSMデータ、11月末にはWorld Education Research Associationの大会で、高校生パネルデータを用いて、進路意識と実際の進路選択の関係について検討を行った。いずれもフルペーパーを提出しているが、学会誌への投稿には少し推敲が必要となるため、それを行っている最中である。 それ以外にも、Yonezawa et al.編によるSpringer社から刊行されるJapanese Education in a Global Age: Sociological Reflections and Future Directors.の1チャプターを執筆し、教育や格差に関する意識の国際比較分析を、ISSPデータを用いて行い、レフェリーからも高評価を得た。
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