本年度は、研究期間の最終年度にあたり、メキシコの関係機関(国立図書館および国立定期刊行物保存館)において、文献・資料の追加調査を二回実施した。今回は、昨年度に引き続き20世紀前半の子どもの福祉に関わる資料を中心に調査し、当時開催された子どもに関する専門家会議の記録、政府機関が発行した当時の報告書および月刊誌などの一次資料を閲覧した。この調査から、保護者のいない子どもや非行年少者などを収容する施設の概要、施設内での子どもたちの活動や生活の様子などについて、とくに収容された子どもたちに対する職業訓練をおこなっている施設に関する情報を得た。 今年度およびこれまでに入手した文献・資料・情報を分析し、宗教団体などがおこなう慈善事業としての福祉事業から政府がおこなう公共福祉事業への転換の経緯、孤児や貧困家庭の子どもに対するメキシコ社会の認識、子どもの保護施設とそこにおける職業訓練の実態などの視点から、とくに20世紀前半のメキシコの子どもの福祉に関する検討をおこなった。この研究成果は、論文としてまとめ学術雑誌において発表する準備が整っている。また、この時代のメキシコ・シティに生きていた恵まれない子どもたちの生活に関しておこなってきた研究について、所属する研究団体において発表し、この研究成果を図書として発表する準備を現在進めている。その他、子どもの教育と社会変革をめぐる地域のつながりを分析した研究論文を学術誌において発表した。 本研究を通じて、19世紀後半から20世紀前半のメキシコ・シティに生きた恵まれない子どもたちの具体的な生活実態について、さらなる資料調査とその分析が必要であると考え、新たに科研費を得て本研究をさらに展開することとした。
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