本研究では、子供期に虐待被害に遭った者を対象に自分自身の生活史を語っていただく長期的な面接調査と児童福祉職員や教員等を対象とした児童虐待施策に関する聴き取り調査を中心とした。その結果、子供期の「自分ではどうしようもなかった出来事が自分の人格形成に影響を及ぼすこと」を自覚できるのは、成人後、長期にわたって徐々に達成できるのであり、それを脱して自分の望むパーソナリティへ向かうためにも支援的な他者の関わりを長期間必要とすることが明らかになった。児童虐待に関する社会的先入観は彼らの自己イメージ形成に影響するが、そうした偏見・ステレオタイプを児童養護施設新設における住民反対運動の中から抽出した。
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