平成29年度にはこれまでの経過をふまえて再構成した学校調査(第二次調査)の実施計画を進める過程で、学校関係者等からの聞き取り等により、「部落差別の解消の推進に関する法律」(平成28年法律第 109号)(平成28年12月9日成立、同月16日施行)の下での新たな課題と展望の整理と地方自治体の教育行政施策や学校教育等における取組の再構想が必要とされていることが改めて確認された。 このことから、本研究課題に関わる社会状況の変化に伴う計画の再検討が、本研究の目的である「子どもの生活圏としての地域社会における人権問題への対応として、学校を中心とした人権教育の実践と学校と家庭・地域の連携による教育コミュニティ形成を進めるために、学校に求められる実践上の条件」の理論的・実証的解明には喫緊かつ重要と判断された。 そこで、本年度の研究内容を徳島県におけるこれまでの「学校を中心とした人権教育の実践」の成果と課題の分析・検討に修正し、1990年代に実践された特色ある人権教育を「集団で語り合う人権学習」と規定し、その成果・意義と課題・展望について、取組の当事者である中学校教員により、その経験者(元中学生、元教員)を対象として、平成28年度末に実施された抽出調査の資料について、当該教員との共同研究の形で再分析をおこない、その成果を学術論文として公表した。 研究期間全体を通して、研究期間中に本研究課題に関わる社会状況が変容したことにより、研究目的に至るアプローチを再検討する必要性が生じたことで、「学校と家庭・地域の連携による教育コミュニティ形成」の必要性と社会的意義に関しても、今後の学校のあり方と学校教育実践の展開のために、新たな理解と意味づけが必要であることが理論的に明確になったことが成果である。今後はその新たな理解と意味づけの再設定とその実践上の条件を再検討することが課題である。
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