本研究の目的は、ひとり親家庭に対する給付政策をめぐる紛争の構造と過程を明らかにすることである。児童扶養手当に関する紛争においては、支給対象者に、死別か離別か、父親に認知されているかいないかといった基準が設けられることで、それが逆に母子家庭の分断を生み出してきた過程を明らかにした。生活保護母子加算に関する分析では、生活保護を受給する母子家庭も単なるひとつの家族カテゴリーとして平面的に位置づけようとする政府側と、その窮状を訴えつつ、具体性を帯びた言説を展開できない受給者側という紛争の構造を見出した。さらに、こうした諸改革全体を通して、社会保障のワークフェア化が顕著に進展していた。
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