研究課題/領域番号 |
15K04369
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
岡村 郁子 首都大学東京, 国際センター, 准教授 (20532154)
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研究分担者 |
額賀 美紗子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (60586361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グローバルな能力 / 異文化間コンピテンシー / 大学生の国際経験 / 留学の効果 / 帰国生 / 高校からの海外留学 / 留学とキャリア |
研究実績の概要 |
過去2年間にわたり国際経験をもつ80名以上の大学生を対象にインタビュー調査を実施してきたが、今年度はグローバル人材育成施策の下で海外留学を経験した学生の学びを定性的に評価し、幼少・学齢期を海外で過ごした帰国生の経験と照らし合わせることによって、留学経験がキャリア形成にもたらすインパクトについて明らかにするために論文を執筆した。大学からの留学経験者22名、帰国生16名にフォーカスし、海外経験を通じて獲得した能力とそのキャリアへのインパクトを比較することにより、海外の高等教育機関に留学することの意味や、1年程度の海外留学の効果を考察した。大学からの留学では、適応力・順応力、コミュニケーション能力、異文化への理解力などの能力を身につけつつも、世界のレベルの高さに自信を喪失したり、短期留学の限界を感じたりしていた。キャリア形成においては、海外の就職活動の合理性に触れたことから日本企業や就活に対する違和感を覚え、留学によってキャリアの方向転換をしたものも多く、結果として22名中ほぼ全員が「海外につながるキャリア形成」を希望していた。海外の若者の考え方やキャリア形成の方法に影響を受け、帰国してからキャリアの方向転換をするなど、直接的な留学経験のインパクトも大きい。一方、帰国生もほぼ全員が「海外につながるキャリア形成」を目指す点で留学経験者と同様の結果であるが、かれらは「帰国生」というポジショナリティから自分の能力を捉え、それをキャリアに活用しようと考えている点が特徴といえる。 なお、当初予定していた4タイプの国際経験を持つ大学生のうち、インターナショナルスクール出身者については研究協力が得られず、分析を断念した。また、H29年度にて3年間の期間満了の予定であったが、研究協力者の産休のため、H30年度まで延長し、高校からの留学経験者を含め3タイプの国際経験による比較分析を行い、総括とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度の1年間、研究協力者が産休に入ったため、実際の調査分析に携わることが難しく、研究全体はやや遅れており、H30年度への延長となった。当初予定していた4タイプの国際経験比較のうち、インターナショナルスクール出身者については、日本の大学への入学の門戸が狭く海外の大学への進学者が多いこともあり、あらゆる努力にもかかわらず協力者を集めることができなかった。結果として、3タイプにて分析を行うことに変更を余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の1年延長が許可され、平成30年度が研究の最終年次となった。これまでの研究成果に加えて、高校からの留学者の分析結果を大学からの留学者および帰国生と比較し、国内外の学会にて発表するとともに、論文にまとめる予定である。さらに、研究の成果を将来的に書籍の形で発行することも計画している。 今後はさらに、このような国際経験をもつグローバル人材の素質をもつ若者が、どのようなキャリアを得て社会で働いていくのかを検証する必要があるだろう。それには、グローバル人材の受け皿として日本企業がその機能を果たしているのかも重要なポイントとなる。H30年度からの新たな研究として、企業の人事担当者や、そこで働くグローバル人材へのインタビューを通して、その現況を明らかにすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者が平成28年度の1年間産休であったために研究の進捗が遅れ、次年度へ繰越の必要が生じた。今年度に繰り越された額については、主に研究成果の報告のための出張費、報告書作成のために使用する予定である。
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