研究課題/領域番号 |
15K04373
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
末田 清子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70244829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 女性管理職者 / コミュニケーション・スタイル / 半構造化面接 / 構成主義版グラウンデッド・セオリー / トライアンギュレ―ション |
研究実績の概要 |
本研究は、一般企業の女性管理職者(課長職以上)を対象に半構造化面接を実施し、女性管理職者のコミュニケーション・スタイルの特徴を探究することを目的とする。 2015年度は東京都および札幌市内のさまざまな業種(金融、IT、サービス、製造、教育、観光など)の企業・組織の女性管理職者および女性管理職者とその協働者(男女)17名に対して半構造化面接を行った。そのデータを、解釈主義的アプローチに基づく構成主義版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、データに根ざした理論構築を試みる。同時に、複数のデータ源(女性管理職者とその上司・同僚・部下)に対してインタビュー調査を行い、複数の理論的枠組みから分析するトライアンギュレ―ションを実施する。本年度焦点化された研究設問は、「一般企業の女性管理職者たちには特徴的なコミュニケーション・スタイルが見られるか」、であった。 2015年度の研究成果は、2016年6月に開催される日本コミュニケ―ション学会(プロポーザル受理)と、9月に開催される異文化コミュニケーション学会とで2回にわけて口頭発表並びに論文投稿を目指す。前者では女性を管理職に起用する歴史が長い外資系IT企業X社に勤務する6名の研究参加者のデータを中心に女性管理職者のコミュニケーション・スタイルについての研究成果を報告する。研究参加者は、年齢30代から60代の男女で、それぞれの業務経験も営業、システムサービス、テクニカル・サポート、管理部と多岐にわたる。後者では、異業種からの転職によって管理職に起用された女性管理職者3名と、同一企業内でキャリアを重ね管理職的立場への転換を果たした女性管理職者3名のデータから、意見の対立や見解の相違など異なる価値観の生じる状況において、女性管理職者たちがどのように協働者とコミュニケーションをとり業務を遂行しているかについて発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初3年間で収集しようとしていたデータの半分以上も収集できたという点で、研究は予定以上に進んだと考えらえる。しかし、分析のプロセスに予想以上の時間が費やされたという意味では、全体として「おおむね順調に進展している」という表現が適当だと言えよう。 2015年4月から先行研究を見直し、研究設問に即した質問項目を立てた。パイロットスタディを行い、質問項目を精錬した。また最新の研究動向を把握するために、6月には日本コミュニケーション学会、9月には異文化コミュニケーション学会、そして12月には人材育成学会に行った。そこで、組織論やモチベーション理論の観点から、研究テーマを見直すことができ、新たな知見を得ることができた。 申請時には、2015年4月から7月に先行研究を行い、事前調査を実施する予定であった。しかし、調査参加者の予定を優先したことで、結果的に5月から東京での調査を開始することができた。また、一年目の調査では女性管理職者のみを調査参加者とし、女性管理職者の協働者には二年目以降に面接する予定であったが、スノーボール・サンプリングにより、協働者にも話を聞くことができた。具体的には、外資系IT企業X社に勤務する年齢30代から60代で、業務経験が多岐に亘る男女の調査参加者を得ることができた。7月23日から26日は札幌に出張し、一般企業や教育機関で管理職を務める女性と、その女性の協働者に対して面接を行った。 2015年8月より2016年3月まで、データ分析を行った。そこで得られた知見を、1) 外資系IT企業X社の調査参加者のデータと、2) 業界横断的な女性管理職者のデータを中心に発表を組み立て論文の概要を練った。前者は、2016年6月の日本コミュニケーション学会で、後者は9月の異文化コミュニケーション学会で発表することを決めた。 2016年3月は、1年間の研究を振り返り、2016年度の調査計画を練り、調査参加者へのコンタクトを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として4点挙げる。まず、グラウンデッド・セオリー・アプローチを行う上で必須である理論的サンプリングを行うために、2015年度に実施した外資系IT企業X社と対照的な企業を選定し、そこから複数の調査参加者を募りX社と比較対照化できるデータを得ることである。1980年代からX社は管理職者に女性を起用してきた経験があり、男性も女性も女性管理職者の存在を当たり前として感じている。X社と対照的になる企業、つまり女性を管理職者に起用する歴史が浅い企業に調査参加者を求めることで、これまで得られている理論的カテゴリーを理論的サンプリングによって飽和できる可能性が見込まれる。 二点目は、2015年も調査参加者が所属する企業・組織の業種は多岐に亘っていたが、業種を製造、広告、エネルギー(電力・ガス)などにも広げ、これまでに得られたデータとの比較検討を行うことが肝要である。また、上記1点目と同様に、これまで得られている理論的カテゴリーを理論的サンプリングによってさらに分析することが可能になる。 三点目は、男性研究協力者の起用である。2015年度は、一般企業での勤務歴が長い女性の研究協力者を得ることにより、一般企業の風土や文化を踏まえて調査を行うことができた。さらに2016年度は、一般企業での勤務歴が長い男性の研究協力者を得ることで、女性管理職者のコミュニケーション・スタイルについて本研究から導き出した知見を、男性管理職者と相対化したい。端的に言うなら、女性研究者だけでなく、男性研究者の視点を入れることでより包括的な知見が得られると考えられる。 最後の点は、得られた知見を海外で発信または発表できるように準備することである。2016年度行う予定の2回の学会発表でのフィードバックを取り入れ、日本語での論文を執筆すると共に英語での論文執筆を手掛けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
各項目ともに、見積額と若干の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費および書籍購入の費用等に加算する。
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