研究課題/領域番号 |
15K04373
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
末田 清子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70244829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 女性管理職者 / コミュニケーション・スタイル / 半構造化面接 / 構成主義版グラウンデッド・セオリー / トライアンギュレ―ション / 混合研究法 |
研究実績の概要 |
2016年度は昨年度の企業と対照的に、日本企業・組織の女性管理職者および女性管理職者とその協働者(男女)15名に対して半構造化面接を行った。昨年度に構成主義版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以降GTA)を用いて構築を試みた理論を、理論的サンプリングによって精緻化した。さらに調査結果の概要をこれまでの研究参加者に共有し、フィードバックも得てそれを考察に活かした。 また2016年度は以下の3つの新しい試みに挑戦した。1) GTAによるコード化をさらに精緻化するために、混合研究法(質的研究主導型)を用いた。具体的には、KHコーダおよびNVivoを使用して、テキスト分析を行い、その結果をGTAの結果に照らし合わせた。2) 新たなサブテーマ「女性のグローバル・リーダーが管理職者になるプロセス」に関して、TEA(複線経路等至性アプローチ)を用いて調査を実施した。この調査においては、1名の研究参加者に対して3回のインタビューを行った。3) 男性の研究協力者を得ることができ、多声性を活かしたデータ解釈を手掛けた。 一昨年度の研究成果は2016年6月に開催された日本コミュニケ―ション学会で口頭発表し、その内容が学会誌『Human Communication Research』45号(pp. 129-150)に掲載されることになった。2016年9月に開催された異文化コミュニケーション学会でも、口頭発表し、その成果を論文投稿に向けて整えている。 2016年度に行った調査を二か所で発表する運びとなっている。2017年6月初旬に京都で開催される日本コミュニケーション学会で口頭発表のプロポーザルが受理され、6月下旬にニューヨークで開催されるIAIR (International Academy for Intercultural Relations) で口頭発表およびポスター発表を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初3年間で収集しようとしていたデータの残り半分以上を2年間で収集できたという点や、新たに研究手法(テキスト分析)を取り入れたことで、GTAの成果をより深く省察できたという点や、トライアンギュレ―ションの新たなあり方として男性研究協力者を得たという点で、「計画以上に進展している」という表現が適当だと言えよう。 2016年3~4月の間に、GTAを行う上で必須である理論的サンプリングを行うために、2015年度に実施した外資系IT企業X社と対照的な企業を選定し、4~8月に15名の調査参加者を得た。X社が、管理職者に女性を起用してきた経験が長く、女性管理職者に慣れていたのに対して、今年度は、女性を管理職者に起用する歴史が浅い伝統的な日本企業を対象にした。 二点目は、9月から2017年3月は収集したデータの分析、論文執筆に向けて諸作業を行いつつ、混合研究法も取り入れ、テキスト分析を用いて、GTAで出てきたカテゴリーの妥当性や相互補完性を吟味した。また、TEAを用いて、特定の管理職経験者に対して5回のインタビューを行った。このことも、本研究で得られる知見をさらに豊饒化するものと考えられる。 三点目は、男性研究協力者の起用である。2015-2016年度は、外資系企業での勤務歴が長い女性の研究協力者を得ることにより、外資系企業の風土や文化を踏まえて調査を行うことができた。さらに2016年度は、日本企業での勤務歴が長い男性の研究協力者を得ることで、女性管理職者のコミュニケーション・スタイルについて本研究から導き出した知見を、男性管理職者と相対化したい。端的に言うなら、女性研究者だけでなく、男性研究者の視点を入れることでより包括的な知見が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として4点挙げる。まず、2017年4月~7月は、GTAで必須とさいれている最終的な理論的サンプリングを行い、GTAから創発されたカテゴリーの飽和を目指す。 二点目は、上記に上げた2回の口頭発表の機会の他に、これからプロポーザルを募集する学会大会の口頭発表に応募する。まず、5月の連休明けくらいに始まる異文化コミュニケーション学会大会(2017年10月7~8日)での口頭発表(ないしはシンポジウム)のプロポーザルを提出する。さらに2017年11月頃には2018年8月の異文化コミュニケーション学会国際大会(SIETAR, International)での発表プロポーザルも提出し、本研究で得られた知見を発表し、いろいろな研究者からフィードバックを頂く。 三点目は、二点目に挙げた口頭発表の成果を活かし、論文にまとめる。具体的にはIAIRの学会誌であるIJIR (International Journal of Intercultural Relations)や、異文化コミュニケーション学会の『異文化コミュニケーション』への投稿を念頭において進める。さらに出版論文をまとめて著書として出版できるようにしたい。 最後の点は、2017年11月ないし12月には、過去にご協力いただいた研究参加者の中から、数名を選出し、大学生向けのシンポジウムを行う。シンポジウムも大学生が登壇者と十分なインタラクションをもち、そのインタラクションから女性管理職者としてコミュニケーションを行うときに必要なこと、またあまねく管理職者に必要とされるコミュニケーション・スキルを学べる機会としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
各項目ともに、見積もり額と若干の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費および物品費等に加算する。
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