研究課題/領域番号 |
15K04376
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
高野 篤子 大正大学, 人間学部, 准教授 (30513048)
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研究分担者 |
日下田 岳史 大正大学, 質保証推進室EM・IRセンター, 助教 (30734454)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大学管理運営職 / 教学支援 / アメリカ / イギリス / スタッフ・ディベロップメント(SD) / 専門職 |
研究実績の概要 |
本研究の第1の目的は,諸外国の大学における教学マネジメントを支える専門職たちの学内での役割とその採用・育成の方法を捉えることにある。日本ではファカルティ・ディベロップメントの義務化,認証評価の実施,教育情報の公表,学長のリーダーシップの強化が図られ,教員と職員の協働によりPDCAサイクルをまわすことが求められている。 諸外国の大学には,教員個人レベルの教育研究活動を支援する,あるいは共通および専門教育のプログラム評価・改善の活動を支援する等の専門職が存在する。彼らの組織内での位置づけや活動を体系的に検証することにより,時間や予算に制約が増し,かつ人員の削減や流動化が進みつつある日本の大学における教学支援の仕組みとそれを支える人材に関する知見を導出することを第2の目的とする。 平成27年度は,2度にわたるアメリカ合衆国での現地調査により,教職協働は合衆国においても課題の1つであること,高等教育を専門・専攻とする大学院博士課程修了者たちの活躍の場が広がっていること,また学内における研修の実施主体である人事担当専門職者たちが果たす役割,日本において注目度の高いInstitutional Researcherや Research AdministratorやAcademic Advisorの存在意義,キャリア形成や能力開発等について理解を深めることができた。あわせて国内における調査により,日本の大学関連団体における管理運営の現職者向けの研修の概要を把握することができた。さらに,平成28年度に向け,日本における比較的新しい専門職に関するデータを収集し,実態を解明するために分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,教員と職員の役割分担や協働が大学全体の教学システムの中でどのように行われているのか,教職員の職能開発がどのように行われているのか,を把握するため,国内外における文献資料の収集および訪問調査を行った。 具体的には,日本の4つの大学団体における教職員の能力開発の状況についてヒアリング調査を実施した。また,2度にわたり渡米し,ペンシルバニア州とテキサス州の大学と高等教育機関の関係者たちへのインタビュー,さらにワシントンDCにあるAmerican Council on Educationにて専門職を対象とした研修の担当者への聞き取り調査を行った。 また日本へのインプリケーションを得るのが本研究の最終目的の1つでもあるので,日本において関心の高い専門的職員の役割や能力開発について国内に流布するデータを収集し分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は引き続き,諸外国の大学における教学支援の専門的組織と専門職について,専門職の採用・育成の情報収集を行う。現職者への学内での職務・研修についてのインタビューおよび学外の関連団体によるセミナーやワークショップへの参与観察を試みる。また日本における教学IRに携わる専門職たちとそのキャリア形成,能力開発に関する調査をさらに進める。 具体的には,大学全体への教学支援を行うIR等の専門職の採用と能力形成に関する調査を行う。IRの関連団体として複数の上級レベルの専門職たちから評価されているSociety for College and University Plannersについて訪問調査を実施する。日本でしばしば引き合いに出されるカレッジポートレイトが全米で実際にはさほど普及・浸透しているものでもないことも分かってきたので,IR担当専門職の能力形成に関しては,設置形態や規模に配慮し,一般教育プログラムや専門分野ごとの教育プログラムの評価支援等を現場で行う専門職たちへ焦点をあて,どのような職務があるのかを整理しつつ,彼らの職務内容とバックグランドやキャリアパス,関連団体等での具体的な研修内容や方法について資料の収集を行う。 あわせて,英米で専門職化が進む大学の人事担当専門職たちの団体であるCUPAやCIPDの活動内容について情報を収集し分析を行う。 また,個別教員への教学支援を行うFD等の専門職の採用と能力形成の調査を実施する。とりわけ当該専門分野での教育研究歴の長い,いわゆるベテラン教員がFD等の教学支援組織にスペシャリストとして配置されている諸外国の大学の実態を明らかにし,彼ら自身の雇用保障の問題,同僚教員の個人情報の取り扱い,教育のトップマネジメント層との関係についても射程にいれ,彼らの職務内容やキャリアパス,大学関連団体等での具体的な研修内容や方法について調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度中に諸外国の専門職団体の年次大会へ参加予定であったが、授業等の校務と重なり参加できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は他の研究機関の連携研究者にこうした国際会議への参加を依頼するとともに、日程を調整し関係者への現地調査を実施する予定である。
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