研究課題/領域番号 |
15K04383
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
山崎 その 京都外国語大学, 総合企画室, 室長 (70449502)
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研究分担者 |
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
太田 浩 一橋大学, 国際教育センター, 教授 (70345461)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大学経営 / 評価指標 / AHP / ベンチマーキング / IR |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学の諸活動を評価する指標デザインとその活用方法の開発である。教育研究の質を保証するには、各大学におけるPDCAサイクルをいかに有効に機能させるかが課題となる。具体的には、大学の特性に応じた施策・計画の成果を的確に測ること、そして評価結果に従って改善するという合意を得ることがポイントとなる。 そこで、平成29年度の実施計画は、平成28年度に実施した「大学経営効率化」に関するアンケート調査で得たデータを使って、大学経営の全体を把握している人物の主観的評価と大学の実態の関係について分析し、その研究成果の公表を行うこととした。 アンケート調査票は三部構成で、第一部は大学経営の実態を定量的に把握するための設問、第二部は大学の機能を「教育」、「学生支援」、「研究」、「社会貢献」、「管理運営」、「ガバナンス・リーダーシップ」に分け、大学経営全般を把握している大学関係者による自大学の主観的評価を行う設問とした。第一部、第二部に関しては、2012年、2014年に実施した「大学経営効率化」に関するアンケートとほぼ同様の内容となっているため、経年変化の分析を行った。第三部はAHPを用いた設問で、社会的責任・持続的成長・個性の発揮の3つの視点(評価基準)から「どの機能がどれぐらい重要か」を総合的に評価しており、第二部の主観的評価と合わせた分析を行った。これらの分析結果を持ち寄って研究会を行い、研究成果を学会で発表し、 高等教育分野の研究者や実務者等との意見交換を行った。 また、平成28年度に実施予定であった海外の大学の調査については、The 29th Annual EAIE Conference and Exhibition(セビリア)に出席し、ヨーロッパにおける大学経営の考え方やランキングの捉え方について意見交換し、情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施できなかった海外の大学の調査等については、The 29th Annual EAIE Conference and Exhibition(セビリア)に出席し、ヨーロッパにおける大学経営の考え方等について意見交換し、情報収集を行うことができた。特に大学ランキングについては、ランキングの結果、すなわち順位を上げることに拘るのではなく、結果をどのように活用するのかという視点が重視されていること等、日本の大学経営の参考になる貴重な情報を収集することができた。 また、意思決定手法の一つである階層分析法(AHP)を用いて、大学関係者が自大学において何を重要な課題と捉えているのかを調査し、実態とどのような差異があるのかを明らかにした。設置形態の別なく、回答大学に共通する事項として、「社会的責任」「持続的成長」「個性の発揮」の中では「社会的責任」を最も重視している大学が多いことや、大学の機能では、「教育」を最も重視している大学が多いということがわかった。一方で、大学の規模や設置形態、学部系統等による違いも部分的には明らかにすることができた。 さらに、IRの組織体制や役割、業務内容についてもアンケート調査の結果を用いた分析を行った。その結果、IRを専従で担当している教員・職員数は大学の規模による大きな相違はみられないこと等が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、平成28年度に実施した第3回「大学経営効率化」に関するアンケート調査結果(特に第二部と第三部のご回答)から特徴的な経営を行っている大学を抽出し、現在のガバナンスやマネジメントの仕組み、運用、大学経営の課題等に関するヒヤリング調査をIR担当者及び大学の経営を実質的に統括している責任者に対して行う。定量調査だけでは一部の情報しか得られないので、アンケート結果のフィードバックも行ったうえで、より詳細な大学経営の実態を理解するため、担当者の意識や考え方、経営プロセス等の行動レベルに関することについてヒヤリングを行う。IR担当者には、とくに定点調査を行っている項目やその方法、誰に報告しているのか等についてヒヤリングを行い、業務内容や役割を具体的に明らかにしていく。 これらによって大学経営の課題を明確にする方法、評価指標の設定方法や適切性の検証、さらには関係者の合意を得ながら作業を進めるプロセスの検証を行い、実際に現場で活用できる手法の開発を行う。 最終年度となる平成30年度は、データ分析や研究会でのディスカッションを通して得られた研究成果を学会での研究発表や学術誌等で積極的に公表していく。また、大学の経営改革は文部科学省等の政策と密接な関わりがあるため、関係省庁の政策担当者等との意見交換も継続して行い、本研究の成果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究費が生じた理由は次の2点である。第一は、国内のヒヤリング調査を実施しなかったため、ヒヤリング調査に伴う国内旅費を執行しなかったことである。 第二は、研究会やワークショップで謝礼が発生しなかったため、人件費・謝金を執行しなかったことである。 平成30年度の使用計画は、資料収集及びヒヤリング調査に伴う諸経費として旅費(国内)を使用する。また、研究成果を発表するための学会等の参加費や旅費、研究成果をとりまとめた報告書の印刷費・郵送費を使用する。
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