研究課題/領域番号 |
15K04384
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
畝川 憲之 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10388332)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国民統合 / RIMUP / 教育政策 / 民族交流 / extended contact theory / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本研究は、マレーシアの国民統合へ向けて打ち出されたプログラム「RIMUP(Rancangan Integrasi Murid Untuk Perpaduan):国民統合のための学生交流政策」について調査し、同プログラムの国民統合発展および国民アイデンティティ形成への成果、将来の可能性の各点について検証するものである。 平成28年度は、現地調査(資料・データの収集、インタビュー)(平成28年9月、平成29年3月に実施)を通して、1)「RIMUPの成果」2)「RIMUPの将来の可能性」の分析を進めた。また、RIMUPの成果、可能性を考える上での理論的支えとなる、3)「contact theoryに関する文献研究」を行った。 1)「RIMUPの成果」の分析について。クアラルンプール地域のRIMUP実施小学校(9校)においてインタビューを行い、すべての小学校でRIMUPが民族間関係の改善および国民統合の発展に効果的に作用しているとの感想が聞かれた。 2)「RIMUPの可能性」の分析について。平成27年度の調査により、すべての主要民族集団(マレー人、華人、インド系)がRIMUPのアイデアに賛同しており、その実施には問題がない一方、RIMUPが制度上の課題(頻度、期間、参加生徒数)を抱えている可能性が高いことがわかった。平成28年度のインタビューを通して、すべての学校がこれらの課題を共有しており、制度上の課題の存在が明確となった。また、頻度、期間、参加生徒数に加えて、新たな視点からの制度上の課題の存在が明らかとなった。 3)「contact theoryに関する文献研究」について。とりわけextended contact theoryに着目し文献研究を進めるとともに、マレーシアでextended contact theoryが機能するのかどうかに関わるsurvey dataを入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度実施報告書において、平成28年度の推進方策として、1)詳細な数的データの収集、2)RIMUP参加校へのインタビュー調査、3)RIMUPの可能性に関する論文の作成をあげた。 1)Universiti Kebangsaan Malaysia, Institut Kajian Etnik、Socio-Economic Development of Indian CommunityおよびUnited Chinese School Teachers' Associationの協力のもと、9つの小学校においてインタビュー調査を実施した。これらのインタビューを通して、数的データサンプルを入手し、RIMUPが制度上の課題(頻度、期間、参加生徒数)を抱えていることを明確にした。 2)「RIMUPの成果」に関する調査方法を量的調査(アンケート)から質的調査(インタビュー)に変更したことより、調査自体に多くの時間を有することとなったが、平成28年度の調査において小学校9校、華人教育団体、インド系団体にインタビュー、国民統合省に再インタビューを実施した。ただし、RIMUP参加生徒へのインタビューは未実施である。参加生徒の紹介を教育団体および小学校に依頼しているが、うまくいっていない。 3)論文は未完成であるが、RIMUPが国民統合に寄与する可能性をRIMUPの制度上の課題(とくに参加生徒数の側面)から考察する研究を、平成29年9月にBritish Educational Research Association 2017 Conferenceで発表することとなっている。 以上を踏まえ、平成28年度の計画目標はほぼクリアできており、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、1)RIMUP参加校へのインタビュー調査(①数的データ[頻度、期間、参加生徒数]の収集、②制度上の新たな課題の存在を明確化、③成果に関する調査[RIMUP参加校の教員対象]、④RIMUP実施現場の観察、⑤RIMUP参加生徒へのインタビュー)、2)RIMUPの制度上の課題から政策の可能性を考察する論文の作成、3)RIMUPを含むこれまでの教育政策が国民統合にいかに寄与してきたのかを考察する著書の出版を目指す。 1)平成28年度のインタビュー対象校(者)からの紹介のもと、さらなるインタビューを実施し、①データの量を増やす、②新たな課題の存在を明確にする、③成果に関する意見の聞き取りを行う。④平成28年度のインタビュー対象校が実施するRIMUPの現場観察(プログラムの実施時期によっては次年度に観察)を行う。⑤平成28年度のインタビュー対象校にRIMUP参加生徒の紹介を依頼する(うまくいく可能性は低いと考えられるが)。 2)平成29年9月にBritish Educational Research Association 2017 Conferenceで行う研究発表をもとに、RIMUPが国民統合に寄与する可能性をRIMUPの制度上の課題(とくに参加生徒数の側面)から考察する論文の作成を行う。 3)平成28年度の研究費で英文編集を行っており、平成29年度中の出版決定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
著書の英文編集費の予算を多めに取っていたため。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍などの購入にあてる。
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