本研究の目的は、全国の朝鮮学校の統廃合過程を解明して履歴図を作成することと、小規模校の存続戦略と課題を明らかにすることである。本年度は最終年度であり、残っている兵庫県調査を完了することが目的だった。 前年度は愛知県を調査したが、同じように県内の面積が広く、かつ朝鮮学校設置数が多かった兵庫県について調査した。兵庫県では、1950年に22校あった学校が、現在は所在地別で6、学校種別で高級1、中級3、初級5となっている。所在地からみると、県内は大きく神戸、尼崎、姫路に分かれ、特に尼崎と姫路地域で統廃合が頻繁に行われたことから、両地域について調査した。また、両地域では、かつて公立分校形態を取っていた場合もあったため、それについても当時の実態を文献や聞き取りで明らかにした。学校の跡地も、できるだけ訪問するようにした。兵庫県でも、かつては県内の広い地域に存在した朝鮮学校が、海側の大都市近辺に縮減していく経緯が確認できた。 また、これまで知られていなかったこととして、有馬朝鮮初級学校が1978年に宝塚初級学校に統合しているが、実はその前年に東神戸初級学校に統合するも、スクールバスによる冬期の移動が地形的に困難だったため、翌年に再度宝塚への統合となった。また、姫路初級学校の前身が、当初は姫路城内にあった。この他、当時を知る方への聞き取りを通して、統合過程の詳細について明らかになった側面が多かったことは、高齢化する当事者への聞き取りを急ぐ必要を感じさせられた。 一方、統廃合しないで小規模校として存続している学校は、独自に相当な努力をしているだけでなく、同じく小規模の学校と連携して教育活動を行っていた。それは、交通手段と道路整備が発達した今日だからこそ可能となった形態でもある。 以上、本年度の予定を概ね達成した。
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