研究課題/領域番号 |
15K04388
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
袰岩 晶 国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, 総括研究官 (00626210)
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研究分担者 |
篠原 真子 国立教育政策研究所, 研究企画開発部, 総括研究官 (30342611)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育学 / 教育社会学 / 教育調査法 / PISA調査 / 国際学力調査 |
研究実績の概要 |
「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA調査)の調査対象者の選出(標本抽出)に関する以下の点について,PISA2012年調査のデータを用いた検証を行った。 (1)多段抽出の効果:PISA調査の標本抽出は,まず学校を選び,その学校の中から生徒を選ぶという2段抽出法を用いているが,日本では級内相関係数が高く(受験後の高校1年生が対象であるため学校間の得点の違いが大きい),それが標準誤差(標本抽出による誤差)を大きくしていることを明らかにした。 (2)層化の効果:PISA調査では,標準誤差を小さくするために,学校をグループ分け(層化)し,そのグループ毎に学校を選んでいるが,データが公開されている層(主層)に注目すると,日本の層間の級内相関係数は低く,層化の効果があまり高くないことを明らかにした。ただし,データが公開されていない層(副層)の効果が高いこともわかった。 (3)重み付けの効果:調査対象者の回答は,抽出される確率と,実施しなかった学校・生徒に関する補正を加味して重み付けを行っているが,日本の場合は実施率が高く,重み付け前と後で結果にほとんど違いがないことがわかった。 (4)標準誤差の計算方法:PISA調査では「層化二段抽出法」が用いられており,単純無作為抽出法に基づいて計算された標準誤差では低く見積もられるため,リサンプリング法などで計算する必要がある。この計算方法のうち,均衡反復複製法(BRR法)はジャックナイフ法よりも理論的妥当性があり,ブートストラップ法よりも実用上の有用性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画では,PISA調査の「標本抽出方法」と「標準誤差の計算方法」を研究することとなっていたが,前者の「標本抽出方法」については研究をすでに終え,日本行動計量学会第43回大会でその成果を発表することができた。後者の「標準誤差の計算方法」もデータに基づく検証をほぼ終え,成果の発表に向けた準備を行っている段階である。 また,平成28年度に予定している「生徒の得点の計算方法」,平成29年度に予定している「データ補完の方法」についても,平成27年度中に国際教育到達度評価学会(IEA)のワークショップに参加し,実際の調査実務に関わる知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,平成28年度は,項目反応理論にも基づく「調査問題の難易度,生徒の得点の計算方法」,平成29年度は,Populationモデルに基づく「データ補完の方法」を研究する。 なお,2015年に実施されたPISA2015年調査の結果が2016年12月に公表され,それに続いてPISA2015年調査で使われた手法も公開されるため,PISA2012年調査とは違う,新しい手法が採用されている場合,平成28年度の研究に新たな内容を追加するとともに,平成29年度の研究に変更が生じる可能性がある。また,研究では,主にPISA2012年調査のデータを使うが,新しい手法が取られた場合,それを検証するためにPISA2015年調査のデータを使う必要が生じるかもしれない。これらの点に関する対応は,平成29年度の研究で行うが,項目反応理論の分析に使用するソフトウェアの変更については,平成28年度中に確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究テーマであるPISA調査では,項目反応理論の分析にACER製のソフトウェア「Conquest」,データの分析にIBM製ソフトウェア「SPSS」が使用されていたが,最新の2015年調査でソフトウェアが変更される可能性があり,それがわかるまで(PISA2015年調査の結果公表が2016年12月であり,その後に公表される),今後の研究の継続性を考えて,購入を見送った。ただし,平成27年度中に代替ソフトウェアを見つけているため,研究の進める上での支障は大きくない。 また,これとは別に,円安のため,当初の予定よりも洋書や旅費が高くなっており,今後の研究の継続のためにも,平成27年度の支出を少なくした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中に必要とされるソフトウェアは確定するため,平成28年度の後半,もしくは平成29年度の前半に,この「次年度使用額」で購入する予定である。
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