研究課題/領域番号 |
15K04391
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
佐々木 宰 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40261375)
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研究分担者 |
福田 隆眞 山口大学, その他部局等, 理事 (00142761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シンガポール / 美術教育 / 多民族社会 / 多文化主義 / 国民統合 / 教育課程 |
研究実績の概要 |
1960年代,1970年代のシンガポールの教育制度,教育改革の状況について,主としてシンガポール国立図書館及び南洋理工大学附属国立教育研究所(NIE)図書館における文献調査を基に把握するとともに,美術教育の教育課程との関係を明らかにした。シンガポールの美術教育シラバスについては,これまで発行された全てを入手してその内容を把握した。さらに,1965年の独立前後の美術界の状況について,文献調査と現地の美術館等における調査を通して一定程度把握した。国立ギャラリー・シンガポールのコレクションや,シンガポール美術館のコレクションを通して,戦後及び独立前後のシンガポール美術と現代のシンガポール美術に見られるアイデンティティの問題について考察した。 また,1980年代の新しい学校教育制度の実施に伴う大幅な教育課程の改訂時に,教育省の美術部門の長として,新しい美術教育の教育課程策定,教師用指導書及び美術教科書の編纂に指導的な役割を果たしたヌイ・ジミー・キムチューとの面談に成功し,当時の状況について聞き取り調査を行った。その結果,1980年代の美術教育の教育課程がもつ「多文化主義と国民統合」という特徴を改めて確認するとともに,その背景について把握することができた。 ヌイを通じて,当時の教育省カリキュラム開発研究所の美術部門長の後任者らとのコンタクトが可能になったので,次年度は1980年代及び1990年代の教育課程及び教科書の作成に関与した人物との面談を通して,より詳細な経緯の把握を試みる。また,華人系作家のネットワークによるアジアにおける美術文化の伝播と,少数民族の美術文化を取り入れた教育内容による国民統合という観点から,台湾の美術教育を比較・分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
美術教育の教育課程に関係する文献に関してはほぼ把握すみであり,教育改革の経緯も把握できている。1980年代当時の教育課程策定や教科書編纂のキーマンであったヌイ・ジミー・キムチューとの面談によって,文献には現れない諸事情を把握でき,かなりの進展があった。 他方,美術界の主要な流れと美術教育の関係については,美術学校の関係者との面談を通して調査を継続する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1980年代及び1990年代の教育課程及び教科書の作成に関与した人物との面談を通して,より詳細な経緯の把握を試みる。また,華人系,マレー系,インド系のそれぞれの美術文化と,国民的文化の関係について,見地の関係者への面談を通して調査を行う。 また,華人系作家のネットワークによるアジアにおける中国の美術文化の伝播状況と,少数民族の美術文化を取り入れた教育内容という点から,台湾の美術教育を調査し,比較・分析する。 前年度までの研究成果を基に,研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者及び研究分担者の業務の都合により,現地調査に赴くことができる時期及び日数の調整が難しく,予想よりも旅費の支出が少なかったため。次年度は最終年度に当たるため,必要な現地調査の日程を調整して対応する。
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