「構図」「構成」「レイアウト」は、これまで絵画・構成・デザインなど、それぞれの領域において検討され活用されてきた用語である。本研究の目的は、脳科学・各種心理学や芸術学などの学際領域の文献を検討することで、これらの概念の背後に共通する「心的メカニズム」を明らかにすること、またその内容を解きほぐしたベーシック・テキストを作成することである。さらにそれに関連して、感覚的な表現レッスンのあらたな手法として、iOSグラフィックアプリの試行レッスンを行った。 最終年度の本年は、研究初年度および2年目に行った諸心理学および造形理論等の文献整理をもとに、(1)昨年度作成した『絵画構造の理解』テキストの補足・修正をおこなった。図版を多用してできるだけ分かりやすく解説することを心がけた。また、そのテキストをもとに、内容をパワーポイントスライドにまとめて講義や演習をおこない講義記録VTRを作成した。解説VTRは、1)抽象絵画入門 2)基礎平面 3)美的形式原理 4)視的要素・情動性を各回のテーマとして、90分x4回で作成してYouTubeにリンクさせて公開した。教育効果の確認には、解説後に画面分析レポートを課して被験者が分析した際の造形用語の活用状況を検討した。 (2)絵画教育や構成教育を今日的かつ効率的に行うために、公開されているiOSアプリの大学生へのトレーニングを継続した。描画や構成のトレーニングに資するための、アナログに替わりうる新たなトレーニング方法としてiPadのアプリを活用しうることが確認できた。 作成したテキストおよびそれにもとづく教育指導の成果は『抽象絵画の構造理解(図版解説版V1)』および『用語理解に基づく抽象絵画制作トレーニングの実践』にまとめてWEBページにて公開した。
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