研究課題/領域番号 |
15K04393
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
石田 久大 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30193329)
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研究分担者 |
杉江 光 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40271720)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アイヌ歌謡 / 子どものうた / 初等教育 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、27年度に引き続き、北海道内に録音として残されているアイヌの子どもの歌の調査を行った。さらに、旭川市近文に伝わる子どものためのアイヌ歌謡について、地元のアイヌの人から聴き取り調査を行い、幼稚園や小学校での教材化を試みた。 録音調査では、北海道道立図書館の北方資料室に残されている久保寺逸彦や知里真志保などが残したテープやレコードなどが調査対象となったが、子どものための歌謡あるいは遊び歌として残されているものはほとんど見当たらなかった。 近年、道内の各地では子どもを対象にアイヌ歌謡セッションが行われることがあるが、それらで用いられているアイヌ歌謡の多くは、大人のための歌謡を扱っているものが多い。そこで、今回の研究では、幼稚園を含む初等教育に絞り旭川市近文地区に残されている子どもの歌や子どもの遊び歌に絞り教材化を試みる方向となった。 実践としては、附属幼稚園において5回にわたりセッションを行った。その中でウコウク(輪唱)もとりい入れたが、限られた時間内に園児にウコウクを理解させ歌唱させることには、予想した様な成果は得られなかった。 また、これまでのアイヌ歌謡に関連する研究として、アイヌの伝承話を題材とししたオペレッタを創作してきたが、今年行われたオペレッタ公演事業の前半に、これまで集積したアイヌ歌謡やあるいは早口言葉などを題材に、会場の子どもたちを中心としたセッションを行った。その時の会場の反応を研究に活かしながら、29年度に実施する予定である小学校、幼稚園のセッションについて立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
道内の図書館では、アイヌの子どもの歌の録音等を見出すことは出来なかったが、このことは、あらかじめ予想されてていた。つまり、先達が著していたように、アイヌの子どももたちはある程度の年齢になると大人と同じ歌を歌っていたということなのか、あるいは録音採取を行った当時の研究者が、子どもの遊び歌に関心がなかったことなどが理由として考えられるが、おそらくは前者の理由が主たる要因であると考えられる。 しかし、今回の研究目的は、現在残っているアイヌの子どもの歌の発掘のみではなく、現在の子ども達に歌えそうなアイヌ歌謡の教材化が目的である。この点において、旭川近文に伝わるいくつかの歌謡について、すでに教材化の試みは行っており、これを実践し成果物を作成する段階に入っている。よって、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、成果物としてDVD「旭川近文に伝わる子どものためのアイヌ歌謡」を作製する。ここでは、いくつかのアイヌ歌謡のあるいは遊び歌の例を示し、それらの教材化の場面を提示し、さらに、旭川の歴史やエカシのインタビューなどを録画してゆく。また、DVDの解説書を作成するが、そこには、幼児、児童が抵抗なく正確なアイヌ文化に触れることが出来るように、アイヌ文化全体につていの綿密な調査研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
道内各地区への調査が十分に出来なかったこと。また、アイヌ指導者からの話を十分には採取できなかったことが、旅費、謝金に余剰が出た原因となる。 また、最終年にはDVD作製、解説書作成などの出費が当初の計画より大きく見込まれるのため、次年度に繰り越したい。
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次年度使用額の使用計画 |
今年は、本研究の最終年に当たるため、具体的にアイヌ関係者の聴き取りが増える。また、DVDにはアニメを使用するため、その製作費も大きく見込まれる。 さらに、今回のDVDは旭川近文に限定される予定であるが、道内各地との比較、特に釧路に現存する歌謡の比較を中心に行うためその旅費などが多く見込まれる予定である。
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