本研究の目的は、道内の幼稚園児から小学校低学年の子ども達に、アイヌ文化が北海道の先人達の文化であることと、その価値の重要性について早い時期から認識してもらうことにある。そのため本教材では、アイヌの子ども歌(あそび歌)に焦点を当てそれらを教材化し、保育現場や小学校で活用できる鑑賞用DVDを作成した。 成果物となったDVD「近文に伝わるアイヌのあそび歌」では、旭川市近文地区を中心とする石狩川流域に伝わるアイヌの子ども歌(あそび歌)を収集し、それを教材化したが、DVDディスク1では、旭川近文に伝わるあそび歌から、舟遊び「ホーチップ」と「へべヘベヘロ」を幼稚園の教材として、小学校用には早口言葉である「サマイクルの犬」、さらにアイヌの輪唱であるウコウク「エムシカネホップル」を教材化し、これらの歌い方や遊び方を収録した。 ディスク2では、生徒あるいは教員の鑑賞用として「鶴の踊り」と、近文でもほとんど歌われることのなくなったウコウク遊び「ムイソカハネーネ」を収録した。また日常的に使われなくなったアイヌ語についての関心を子どもの時点で抱いてもらうため「アイヌ語による新しい子どもの歌」を創作し、それらはDVDの中に演奏として収録し、楽譜も作成した。 また、旭川市内でアイヌ文化について指導する教員が、かつて給与予定地であった旭川近文について理解できるように、DVD解説書には近文アイヌの年表を作成して載せるとともに、戦後以降のアイヌの人たちの実際の生活にも理解を持ってもらうため、上川地域のアイヌ文化継承を担ってきた川村カ子トアイヌ記念館館長のインタビューなども収録した。 完成したDVDは道内の主要図書館はじめ、全国の教育系大学図書館や、かつてアイヌ文化圏と深く結びついていた東北エリアの図書館など計120か所に寄贈した。
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