研究課題/領域番号 |
15K04406
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
森田 香緒里 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (20334021)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 相手意識 / 児童作文 / フォリナー・ライティング / 国際比較 / メタ認知 / 作文研究 |
研究実績の概要 |
相手意識を核とした作文カリキュラム開発のための理論的基盤を構築するため、これまでの科研費で収集した小中学生の作文データ(日本)及び英国児童の作文データの再検討を行った。具体的な手順は、以下の通りである。 ①古典修辞学と現代レトリック研究における「相手意識(聴衆)」概念の整理、認知心理学における80年代以降の作文発達研究の再検討、日本語教育におけるフォリナー・ライティング研究の動向の確認を行った。 ②作文データの中から特に、日本人低学年児童の作文データと英国人低学年児童の作文データを取り上げ、相手意識の初期段階での発生の実態とその機能について、国際比較を行った。分析の観点及び手法は、①の成果によるものである。 ③②の分析結果から、日本人低学年児童の作文における相手意識は、主として話題選択と表記に比較的集中して向けられることがわかった。これに対し、英国人低学年児童の作文では、語に集中して意識が向けられる傾向にある。 ④このことは、書く過程における児童のメタ認知の範囲が日英で異なることを意味しており、日本人児童の作文において相手意識は、まず「何を」書くかの選択行為に結びつきやすい傾向にあり、相手によって「書きたい」ことを明確化していく機能をもつと結論づけた。 ⑤上記③④で指摘した日英での違いが何に由来するのかを追究するために、日本の作文教材(国語教科書の作文単元)、英国の作文教科書、レトリック研究を基盤とする作文研究書等の文献を入手した。作文技術の系統性を把握し整理するためであるが、現在もその作業は継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
児童生徒の作文データについては、これまでの科研費で収集したものを分析対象としているため、作文データの再検討については、おおむね順調に進展している。再検討の結果についても、論文にまとめ査読付き学会誌に投稿しており、現在結果待ちとなっている。 また、レトリック研究を基盤とした作文教科書、日英の作文教材の収集についても、主立ったものはだいたい収集済みである。今後はそれらから作文技術を抽出し、系統性について検討する予定である。なお、作文データの追加収集が必要になったため、次年度の研究計画に組み込む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の作文分析の結果、児童生徒の作文データの追加収集が必要であると判断した。統計処理が可能なデータ数に満たない年齢層の作文データがあるためである。また、児童作文に表れる修辞性を分析するためには、これまでの作文課題とは異なる作文課題で、新たに追加してデータを収集する必要がある。 そのためには小中学校での調査が必要となるが、調査校及び担当教諭らからの内諾は得ており、所属機関の「ヒトを対象とする研究倫理審査」の承認も既に得ていることから、6月からの追加調査が可能な状態にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内旅費を使用できなかったことが主な理由である。全国大学国語教育学会への参加(5月:兵庫教育大学、10月:創価大学)を予定していたが、いずれも所属機関における業務と重なってしまい、参加できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
英国を中心とした海外の作文教科書の検討を予定しているが、範囲を広げ、英語圏及びドイツ・フランスの作文教科書の購入費に充てることを計画している。古典修辞学及びレトリック研究と作文指導との関連を、より広範に検討するためである。
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