研究課題/領域番号 |
15K04406
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
森田 香緒里 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (20334021)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 作文指導 / カリキュラム / 作文技術 / 論証 / 相手意識 |
研究実績の概要 |
児童生徒の相手意識の発達過程とレトリック研究とを融合した作文カリキュラムの開発を行うため、今年度は以下の4点の研究を行った。昨年度までは、児童生徒の相手意識の表出の特徴と発達過程についての分析・研究を主として行ったため、今年度はレトリック研究の援用方法に関する研究に力点を置いた。 (1)レトリック研究に基づく欧州の作文カリキュラム「プロギュムナスマタ」に着目し、作文技術の配置という観点からカリキュラム分析を行った。その結果を小中学校の国語教師に示し、作文指導への援用方法に関して意見を聴取した。 (2)(1)の結果から、小学校においては書く内容を「構成」する技術について、中学校においては意見を「論証」する技術について、より段階的にカリキュラムに組み込む必要があるとの結論に至った。 (3)小学校の説明的文章教材の分析を行い、「構成」、すなわち情報の配列がどのように示されているのかについて明らかにした。具体的には、低学年教材においては「形態」「機能」という二つの要素から成る構成、中学年教材においては「情報の重要度」による構成、高学年教材においては「例証」を多用した論証の構成、という傾向を明らかにすることができた。 (4)中学校作文カリキュラムに組み込む「論証」の内容を検討するために、中学生を対象にした作文調査・分析を行った。具体的には、2校の中学生およそ120名に意見文を書いてもらい、そこに用いられる論証構造について分析を行った。中学生が既に習得している論証(習得が容易な論証)と、段階的・意図的な指導が必要な論証とを区別するためである。分析はまだ途中だが、データを提示しただけの不十分な論証が目立つこと、また「定義」からの発想による論証が目立つ等の傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中学生向けの作文カリキュラムの開発には、中学生の作文の実態調査が必要、との結論に至ったのだが、調査協力校の都合により、調査実施が夏と冬になってしまった。そのため分析が遅れ、その結果に基づく作文カリキュラムの開発が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
小中学校の作文カリキュラムの開発が目的ではあるものの、試行に関しては、小中どちらかに限定して行うことも考えている。小中学校における授業実践での試行は、ともすると計画通りいかない可能性もあるので、その場合は、学校教員らからの意見聴取に切り替えて、目的の達成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた作文調査の実施が遅れ、それに伴い、成果をまとめる作業が遅れたことが理由である。また、作文調査の対象校が旅費を要しない場所だったことも、予定より使用金額が低くなった理由である。次年度は、成果をまとめるために、関係者への意見聴取および成果発表に伴う旅費を使用する。また、成果の検証や還元に関わる物品(図書等)や、論文掲載料等についても使用を計画している。
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