研究課題/領域番号 |
15K04408
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
喜多村 徹雄 群馬大学, 教育学部, 准教授 (60466688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鑑賞教育 / 地域資源 / 地域アートプロジェクト / 現代美術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域や地方で開催されるアートイベントを地域資源と捉え、これを活用することで美術館を利用して得られるのと同程度の鑑賞教育を実現する方法を研究・開発することである。具体的には以下の3つのことを明らかにしようとするものである。1.地域資源を活用することで社会教育施設である美術館と同程度の鑑賞機会を創出できるのか。2.地域をテーマとする今日的表現を鑑賞題材とすることで学習者は美術を通して地域を学習することができるのか。3.地域をテーマとする美術作品を鑑賞することで学習者は社会化するのか。 平成27年度は、群馬県吾妻郡中之条町で隔年開催されている「中之条ビエンナーレ」と群馬大学教育学部美術教育講座、同附属特別支援学校の連携事業「フラットホーム@グンダイビジュツトクシ」の連携構築のプロセスおよび実践を記録した。アートプロジェクトに参加した学習者の行動変化を分析した結果、地域を題材とした題材開発においては表面的な理解に留まった(目的「2.地域を学習する」)。他方、学習者は社会化する傾向にあることが分かった(目的「3.学習者は社会化するのか」)。今回の調査対象者は、プロジェクト実施の当事者だったため、目的「1. 美術館と同程度の鑑賞機会を創出できるのか」は該当しない。連携事業に参加した学生の行動変化から分析して得られた教育的効果は論文にまとめ、学会で口頭発表を行った。 各地で開催されている地域アートイベントの視察を行った。特にこれまで未調査だった九州地方への調査によって、「別府現代芸術フェスティバル 混浴温泉世界」(大分県別府市)では、メディアへの露出が少なかった教育普及活動の実績が認められた。加えて、佐賀大学への調査によって、佐賀大学が共催する「第15回 天山アートフェスタin小城」(佐賀県小城市)に、平成28年度に参加することが決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画した3つの項目の内、1.中之条ビエンナーレと群馬大学教育学部美術教育講座、同附属特別支援学校との連携事業構築のプロセスおよび実践の記録は、「フラットホーム@グンダイビジュツトクシ」に参画したことで実現できた。2.の学習者の行動変化は、上記プロジェクトに参加した学生の行動変化や学習の転化を分析し、論文にまとめることができた。3.の題材と地域性の関係および傾向に係る調査については、未調査だった九州地方への調査を行い、地域資源(観光資源、文化資源、歴史資源)をプラットホームにしたプロジェクトが展開されていることを確認できた。 平成27年度当初に予定していた計画は遂行できていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度の調査・研究結果の内、予想に反した結果(目的「2.地域を学習する」)について、その理由の分析を進める。そのため参加を予定している「第15回 天山アートフェスタin小城」において、研究者が地域資源を活用した題材を開発し、比較検討を行う。平成27年度の実践では該当しなかった目的「1. 美術館と同程度の鑑賞機会を創出できるのか」については、天山アートフェスタで検討することが可能だと考えている。これらの結果を分析して、平成29年度開催予定の「中之条ビエンナーレ」で実践できる授業題材の検討を行う。 地域アートプロジェクトへの調査研究は、研究期間全体を通して行うが、平成28年度は教育普及活動にも力を入れている「あいちトリエンナーレ2016」が開催されることから、現地調査を行う。その他、調査が不足している地域で開催されているアートプロジェクトを積極的に調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中之条ビエンナーレと群馬大学教育学部美術教育講座、同附属特別支援学校との連携事業に参加した結果、当初の予想以上にエフォートが増大したことに加え、本務校での運営業務の多忙および煩雑化に伴い、各地で開催される地域アートプロジェクトへの調査日程を確保することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
地域資源が利活用されているアートプロジェクトおよび展覧会および天山アートフェスタに参加するための調査旅費に使用する。
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