研究課題/領域番号 |
15K04409
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
河村 美穂 埼玉大学, 教育学部, 教授 (00361395)
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研究分担者 |
清水 理子 (片平理子) 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (70204427)
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
嶋口 裕基 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (80631936)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 調理実習 / 家庭科教育 / 食生活教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の家庭科教育で行われている調理実習の特徴を、他国と比較して明らかにするものである。初年度(27年度)は、(1)日本の中学校・デンマークの中等学校におけるそれぞれの調理実習授業を観察し、比較すること (2)中学校の生徒に設定されている両国の料理コンクールを観察し、比較検討すること (3)以上の比較検討の視点として援用するブルームの文化心理学の考え方を整理し有用な視点を析出すること の3点について研究をすすめた。 (1)については日本の公立中学校での観察(2016年1月21日)、デンマークの公立中等学校での観察(2016年3月30日)を実施し、現在データの整理中である。 (2)については日本のおべんとうコンクールの観察(2016年1月23日)、デンマークのFood Fight Finalの観察(2016年3月31日)を終え、こちらも比較検討中であり、2016年8月1~7日に開催される国際家政学会韓国大会で発表を予定している。 (3)については、担当者による研究会を3回開催し、以下のような視点を本研究の分析視点として利用することとした。すなわち、ブルーナーによれば文化は共有された規範であることから本研究の場合には、[1]生徒の属する文化(身を置き、場合によっては変化させようとしている)と[2]対象とするもの[料理や調理活動]を形作る文化を対象とするが、とくに日本の中学生の料理や調理活動への考え方を明らかにする。具体的には複数の観察者が、同一グループを観察対象とし、時系列で起こっていること、会話の様子を記録し[1]生徒同士の関係を教員の働きかけも含めて明らかにし、[2]生徒が料理に向き合う姿勢や料理への思いが表れている点も明らかにすることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、本研究が依拠するブルーナーの文化心理学について、家庭科の調理実習に即し分析の視点を析出した。さらに2016年1月23日おべんとうコンクール、同年3月31日Food Fight Final の観察調査を行い、比較検討しているところである。 ただし、両国の中学校(中等学校)調理実習における観察調査を実施して、両国の調理実習の目的、および前提とする形態が大きく異なっていることから単純に比較することは不可能であると判断した。この点については、日本のおべんとうコンクールとデンマークのFood Fight Final についても同様であり、比較検討という方法ではなく、観察調査データを用いてそれぞれのコンクールの特徴を明示するということにしたいと考えている。とくに日本のおべんとうコンクールに関しては、全国レベルの大会であるにもかかわらず、各地の参加者数や予選の方法などについては詳細に把握されておらず、このコンクールでの学びについても十分には説明されていないことから、参加者及び各地での地方予選等の詳細を明らかにし、このコンクール全体の教育的意義について検討することが必要と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
中学校(中等学校)における調理実習の観察調査のデータをもとに、それぞれの調理実習の特徴を説明できるように分析する。さらに、両国のコンクールの目的、社会的背景、文化的背景について明らかにし、比較検討を行う。一方で、厳密な比較検討が不可能であることから、それぞれの国における調理実習の特徴と、これに関連させて料理コンクールの位置づけとその教育的意義についても検討する。 日本のおべんとうコンクールについては、そのレベルの高さと教育的意義を説明し海外に発信することとし、一方のデンマークのFood Fight Finalについては、日本とは異なるinovativeな取り組みについて、日本での調理教育の再考を促すヒントとして、国内への報告を中心に行う。 なお、2016年8月には、両コンクールの比較検討の結果を国際家政学会2016韓国大会で口頭発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、観察調査のデータ整理等に謝金を設定していたが、27年度の観察調査のうち、デンマークのFood Fight Finalの実施日が3/31であったことから、この実施日にあわせて中等学校の調理実習の観察も実施し(3/30)たことから使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度観察調査による調査データの整理等については、28年度に実施することとなった。その結果次年度使用額がは本報告後ただちに使用する予定である。
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