研究課題/領域番号 |
15K04415
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小久保 美子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30413032)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 読書活動 / 脳科学 / fMRI |
研究実績の概要 |
研究の初年度に当たる27年度は、検証実験に用いるテキストを選定して実験用に加工し、新潟大学脳研究所統合脳機能研究センターにて、10人の大学生(男性5名、女性5名)を対象としたfMRIの予備実験を行った。 実験に用いたテキストは、以下の7作品である。①ずっと、ずうっと大好きだよ②いつもいっしょに③おかあさんどこいったの?④かぜをひいたおつきさま⑤くまのコールテンくん⑥こびとのくつや⑦きみへのおくりもの これらの作品を起承転結の場面に分け、それぞれの場面を30秒程度のストーリーに要約し(1枚のスライドに収めたストーリーが10秒間流れると次のスライドに移行し、続きのストーリーが10秒間流れ、さらにその続きのストーリーが10秒間流れるように加工)、実験用動画を作成した。 実験は、被験者1人につき、①あらすじをまとめる②最も心に残ったことをまとめる③課題なし の3つの課題の下に、それぞれ異なる物語を読んでもらった。なお、課題の順序及び物語内容の影響を避けるため、課題提示の順序を変えるとともに課題と物語の組み合わせも変えるようにした。 1回の実験手続きは、読んでいる時の脳の賦活状況を明らかにするために、読んでいる時と休んでいる時とに分け、「1分間休止→30秒間読む(起の場面)→30秒間休止→30秒間読む(承の場面)→30秒間休止→30秒間読む(転の場面)→30秒間休止→30秒間読む(結の場面)」という順序で行った。実験直後に、ワークシートに、上記の課題について回答してもらった。また、課題ごとに物語の記憶が異なるか否かを調べるために、2週間後にも同一の課題に回答してもらった。さらに、本実験と読書習慣や読書傾向との関係の有無を調べるための質問紙調査も実施した。以上の実験内容は本研究独自のものであり、10人の貴重なデータを得られたことは大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は小学校高学年を対象とした予備実験を行うことを計画していたが、小学校高学年が読むのにふさわしい7編の物語を発掘し、実験動画を作成することができたことから、実験方法を確立するために、大学生を対象とした実験に切り替えた。 男性5名、女性5名の実験を通し、個人差や物語内容の影響関係を明らかにする必要はあるものの、読書課題によって脳の賦活状況が異なるのではないかという仮説に対する検証実験を行うことができたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、予備実験の結果を基に、小学校高学年の児童を対象に本実験を実施し、得られたデータを解析することを中心課題とする。具体的な手順は以下のとおりである。 (1)被験者は、物語を読むことの経験を積んできている小学校5年生、20名程度(男女比については必ずしも等分としないが、極端な偏りは避ける)を対象とする。被験者の選定に当たっては、新潟大学脳研究所・統合脳機能研究センターから近い所に位置する新潟大学教育学部附属新潟小学校の児童を中心に募る。 (2)実験を実施するに当たっては、fMRI開発者で連携協力者の中田力氏、並びに認知脳科学者でfMRIを用いた研究を行っている連携協力者の伊藤浩介氏の補助の下に行う。実務的な補助を行う者としてアルバイト学生を雇用する。 (3)実験から得られたデータの解析を行うに当たっては、連携協力者の指導を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳画像解析ソフトの購入を予定していたが、新潟大学脳研究所・統合脳機能センターが所有するソフトを使用することが可能になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)国内外の読むことの指導に関する文献 (2)国内外の「脳科学と教育」に関する文献 (3)研究補補助者雇用経費 データ整理補助者1人×40日 (4)被験者謝金・交通費(20人)(5)全国大学国語教育学会・・・東京×3日×1回 (6)日本読書学会・・・東京2日×1回 (7)その他学会参加費 (8)複写費
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