研究課題/領域番号 |
15K04415
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小久保 美子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30413032)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 読書活動 / 脳科学 |
研究実績の概要 |
29年度は、27年度、28年度の大学生の実験結果を踏まえ、新潟大学附属小学校5年生の児童を中心に、5名(男子4名、女子1名)の児童の実験を実施した。実験の内容は、27年度に実施した大学生の脳活動との差異の有無を調べるために、使用テキスト及び実験方法は同一とし、物語文を対象とした3つの読書課題(①あらすじを伝える「以下「あらすじ報告課題」②最も心に残ったところを伝える「以下「印象報告課題」)③自由に読む(以下「自由課題」))の下で読んだ場合の脳活動の差異の有無を調べるというものである。大学生との脳活動の差異の有無を明らかにするには、さらに児童の被験者数を増やす必要があり、30年度の課題である。 また、研究活動として、第61回日本読書学会及び133回全国大学国語教育学会にて、研究発表を行った。日本読書学会のテーマは、「読書課題とストーリー再現性との関連」というもので、「あらすじ報告課題」と「印象報告課題」とでは、「印象報告課題」の方が2週間後のストーリー再現性が高いという結果が出たことについて発表した。全国大学国語教育学会の発表テーマは、「物語を読んでいる時の脳活動の実際―2つの課題下でのfMRI実験の結果を通して―」というもので、読書学会での発表に基づき、ストーリー再現性の高かった「印象報告課題」下での読書活動時に賦活した4箇所(①ブローカ野②下前頭前野③ブロードマン9野④ブロードマン6野(補足運動野)」は、人間の脳の発達にとって極めて重要な役割を担っていることについて発表を行った。 読書課題によって賦活する脳部位が異なるという生物学的根拠は、学校現場での読むことの学習指導における課題設定に大きな示唆を与えるものとなることを期待したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「あらすじを伝える」「最も心に残ったところを伝える」「自由に読む」という課題の違いによって、2週間後のストーリー再現性が有意に異なることを明らかにすることができたこと、また、再現性が最も高かった読書課題「最も心に残ったところを伝える」下で活発に賦活した4つの脳部位を明らかにすることができたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
30年度の研究活動内容は、以下の3点である。 (1)児童を被験者とした異なる読書課題下で物語を読んだ時の脳活動の差異の有無を調べるfMRIの追加実験(5名) (2)大学生を被験者とした物語テキストと哲学的テキストを読んだ時の脳活動の差異の有無を調べるfMRIの追加実験(10名) (3)テキストのジャンルの違い、読書課題の違いによって活動する脳部位の違いの有無について、これまでの実験結果から考察し論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張旅費及び研究補助者の謝金
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