本研究は,学校教育の公民分野,特に経済分野の教育内容において経済学の各学派がどのように反映し影響しているのかについて歴史的分析を行い,その上で教育における方法について検討することが研究の目的であった。そのため戦後発行された高校の政治・経済の教科書すべてについて分析を行った。収集した資料の分析は、量的および質的な時系列分析を行った。量的分析としては,出版社や教科書の数および占有率の歴史的変化の把握とその変化の理論的考察を行った。そして質的分析としては,教科書の内容の特徴の把握と歴史的変化の把握を踏まえた理論的考察を行った。この成果をもとに,高校教科書における経済学の学派の影響の分析を行った。従来の方法とは異なる調査方法を設定し,仮説の検証を行い,ほぼ仮説を肯定する結果となることが明らかになった。結論として、高校政治・経済教科書の学派の記述が、経済学会の各勢力と比例関係にあることを実証した。従来の社会教育における問題点として、対立する問題の扱い方が理論的に明らかになっていないという問題の解明のために、文献の読了とサーヴェイを行った。他方で、クリティカル・シンキングの文献の読了とサーヴェイを行い、それぞれの従来の理論の体系的把握と同時に問題点の整理を行った。従来の方法論の問題点を明確にし、それに対する改善の理論的検討を行った。これまでの方法では、価値対立にしても理論的対立にしても、教育的に取り扱う場合、それぞれを生徒に批判的に吟味させるが、その後どのように生徒自身が選択をしてゆくのかは、生徒にまかせる形になっていて、生徒がどのように選択してよいのか必ずしも明確ではないというのが、クリティカル・シンキングを応用した教育方法での問題点であった。この点を克服する方法的な改善についての研究を行った。
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