研究課題/領域番号 |
15K04423
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
真島 聖子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10552896)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共通教材 / 日韓交流 / 朝鮮通信使 / 教員養成 / 市民的資質 / 歴史認識 / 小学生交流 / 教育実習 |
研究実績の概要 |
2018年度は,日本と韓国の教員養成に焦点を当てて研究を行った。研究の対象として,日本では,愛知教育大学を取り上げ,韓国では,晋州教育大学校を取り上げた。 共通教材の作成に向けて,愛知と晋州の歴史に着目した。特に近世の安土桃山時代から江戸時代にかけての日韓関係史を中心に取り上げ,教材化を試みた。 1592(文禄元)年に豊臣秀吉が諸大名に命じて朝鮮に15万人の大軍を派遣した文禄の役と1597(慶長2)年再び朝鮮に軍を派遣した慶長の役によって,朝鮮では多く人々が犠牲となったり,日本に連行されたりした。朝鮮の南部の都市である晋州にも豊臣秀吉の命を受けた軍が攻め込み,晋州城で激しい戦いが繰り広げられ,朝鮮の民衆や義兵による抵抗運動が起こった。この戦いにより,日本と朝鮮の関係は悪化したが,1609年,対馬藩の努力で日本と朝鮮との国交が回復した。日本に連行された朝鮮の捕虜を返還する使節の往来を続ける中で信頼関係を取り戻し,やがて,徳川将軍の代替わりごとなどに,祝賀使節として朝鮮通信使が日本に派遣される慣例となった。 この一連の歴史について,豊臣秀吉,徳川家康の出身地である愛知県の教員養成大学である愛知教育大学の学生と朝鮮の激戦地であった晋州城がある晋州教育大学校の学生が共に学び,歴史認識を深める共通教材を作成することを目的とした。教材化にあたっては,名古屋市中区橘にある崇覚寺の住職の協力を得て,崇覚寺に伝えられている「朝鮮通信使屏風図」を実際に日韓の教員養成の学生が共に学べるように考慮した。 この共通教材を活用して,日韓の教員養成の学生が共に相互理解を深めながら,市民的資質を育成する日韓交流プログラムを開発した。このプログラムは,日韓の教員養成大学の学生だけでなく,日韓の小学生交流と日韓相互の小学校での教育実習を組み込んだところに特色がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共通教材の作成に当たっては,共通教材のテーマとして「徳川時代の平和外交―朝鮮通信使」を取り上げた。豊臣秀吉の命による2度にわたる朝鮮侵略は,朝鮮に暮らす人々に多大なる被害と犠牲を与え,国土と文化を破壊し,朝鮮と日本の関係を悪化させた出来事である。しかし,対馬藩の努力により,江戸時代には,捕虜の返還から関係修復を重ね,やがて,将軍の代替わりに祝賀使節を送る朝鮮通信使として,江戸の文化や学問にも影響を与え,朝鮮と日本の平和を維持する重要な役割を担った。このようなテーマでの共通教材は,愛知県と晋州との歴史的な関連も深く,愛知教育大学と晋州教育大学校の学生が共に学ぶ教材としてふさわしいものである。このような共通に学ぶ価値のある教材を開発できたことにより,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は,開発した共通教材を活用した授業を実施し,アンケート調査によって日韓の教員養成における市民的資質の育成にどのような効果があるのか,検証する。また,共通のテーマで小学生にも授業を行い,実際に相互交流するプログラムの前後で意識の変容があったかどうか検証する。 また,作成した共通教材をさらに活用しやすいものに修正して,テキストブックとして日本語と韓国語に翻訳し,今後も継続して市民的資質の育成に寄与できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の成果をより適切に還元する方法を考えたところ、研究成果を様々な場面で活用できるようなテキストブックを作成し、その活用方法まで検証する必要があるとの結論を得た。そこで、テキストブックの作成のための教材費や調査費,研究の補助者への謝金、日韓両国で活用するための翻訳作業に関わる謝金,テキストブックの印刷費,ジュニア版の試行的作成費用を次年度使用する。
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