研究課題/領域番号 |
15K04427
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
|
研究分担者 |
吉村 功太郎 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00270265)
上地 完治 琉球大学, 教育学部, 教授 (50304374)
藤原 孝章 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (70313583)
田中 曜次 同志社大学, 免許資格課程センター, 准教授 (90511064)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | シティズンシップ教育 / シティズンシップ / 品格教育 / 道徳教育 / 価値教育 |
研究実績の概要 |
本研究が主たる対象とする道徳性は,シティズンシップ教育においてはcharacter(「品格」と訳す),moral(「道徳」と訳す),values(「価値」と訳す)の三つの概念によってとらえることができるが,これらのうちの何に重きを置くかによって,シティズンシップ教育の目ざす目標も異なる。本年度は,日本と同じアジアにあって品格教育や道徳教育に注目するシンガポールと香港を取り上げて,価値の内容やカリキュラムの構造について分析するとともに,英国と比較して,それらの特質やカリキュラム化のあり方について検討した。 シンガポールでは現在,シティズンシップや道徳性の教育は「Character and Citizenship Education(CCE)」として一体化されるとともに,その中核に道徳的な価値が置かれている。また,道徳的な価値の外延にシティズンシップの「スキル」を位置づけるとともに,上位概念としての「シティズンシップ」を教育の目標として重視している。 香港では,改正版「Moral and Civic Education Curriculum Framework」(2008)において,「忍耐」「他者への尊敬」等,7つの優先的価値と態度を定めるとともに,認知と情動と行為の3つの学習領域に支えられた肯定的な価値と態度の育成を中核に置き,それを学習と実際の体験と学習経験が支える構造になっている。 英・新・香を比較すると,シティズンシップ教育における道徳性は,道徳的価値を中核に置くものと,道徳的価値のみならず実践知としての徳(phronesis)を中核におくものの2種類がある。シンガポールや香港は前者であり,英国は後者である。その背景にはその国の置かれる政治的状況や歴史が密接に反映している。その意味で,シティズンシップそのものが政治的な教育分野であることがあらためて明らかになった。
|