「カリキュラム及び授業単元開発に関する研究」に関して、前稿の「韓国における経済教育の新動向 : 2015改訂中学校社会科教育課程の経済領域を中心に」に引き続き、韓国の2015改訂社会科教育課程の経済領域および教科書分析を行った。具体的には、韓国における経済教育の系統性に焦点を当てて、小・中・高の社会科教育の経済領域において、希少性、機会費用、合理的選択がどのように取り扱われているのか、その特徴と問題点について、カリキュラム・マネジメントの視点から分析・考察し、日本の経済教育と比較するこよによって、示唆点を抽出した。 結論としては、①日韓の経済教育の比較考察から明らかになった特徴は、まず韓国の場合、社会科における経済領域の全般的な体系が小学校段階から確立されており、中高へと系統性を維持しながらカリキュラムが構成されていること、②希少性、機会費用、合理的選択を取り上げ、焦点を当てて考察した教科書の事例研究でも、韓国の学校における経済教育の系統性が確認できたこと、③中学校社会科教科書に典型的に見られる金融教育の内容の違いである。金融へのアプローチが日本は企業の資金調達の側面からであるのに対し、韓国は個人のパーソナルファイナンスの側面から行われていること、を指摘した。 この部分の研究成果については、大阪教育大学経済教育研究会編『経済教育論序説』大学教育出版社、2020年5月刊行予定の第11章「日韓の経済教育に関するカリキュラム・マネジメントからの比較考察-経済概念学習の系統性と金融教育を中心に-」で公表される。 なお、韓国の経済教育との比較を念頭において、日本の経済教育に関する全般的な特徴と課題を同上書の「はしがき」で整理して論じている。同上書は現職の学校教員と大学教員が共により良き経済教育の理論と実践を開発することを目的に研究活動を行ってきた、その成果を著している。
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