本研究では子どもたちの立体造形と描画発達段階の相違点やそれぞれの特徴等を明らかにするため、兵庫県内の幼稚園、小中学校、大学の園児、児童、生徒、学生、約650人へ調査を行い、それで得られた情報等を分析、考察した。その結果、図式期までは描画も粘土造形は、同じように発達するが、中学年以降はそれぞれの媒体の特徴等により、粘土造形は描画と比べて、表現としての発達が停滞気味となることが明らかになった。又、描画においてモチーフの側面を想像させるなど、活動に特別の状況を設定することが子ども達の造形意欲を強く刺激することが分かった。さらに描画表現が得意な子ども、粘土造形の得意な子ども、モデルを見て描くことで表現が豊かになるケース、かえってそれが表現の妨げになるケース、写実的な表現に長けたタイプや、対象を単純化しイラスト的に表現をするのが得意なタイプなど、同じ学年の子ども達であっても様々な表現傾向やタイプに分かれることが確認出来た。 調査結果を元に幼稚園や小学校の活動や授業の中で取り入れることが出来るプログラムを開発し、研究成果と共に冊子としてまとめた(『幼児・学童期における立体造形と描画の発達段階の共通性についての研究』全106ページ)。プログラムは、それぞれの子どもの表現の傾向やタイプに応じ、立体造形と平面造形、それぞれの特質や魅力を体感出来、双方の豊かな表現に繋げることが出来るものを目指し、かつ短時間で行え、身近な素材や道具で出来るものとなるように工夫した。今後これを多くの実践者に元に届けることにより、研究成果の還元を図りたい。
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