本研究は,第1に,技能者の木材切断技能の巧緻性をモデル化すること,第2に得られた巧緻モデルによる効果的な指導法を開発することが目的であった。 特に,最終年度の研究は,加速度・角速度センサによって,木材の切断を行うのこぎり引きの技能の定量的評価を確立すること及び効果的な指導法の開発の2点であった。 加速度・角速度センサによる技能のモデル化については,長年の宮大工経験者,工業高校伝統建築コースで学ぶ高校生,未経験の大学生の3群を被験者として検討を進めた。方法は3方向の加速度・角速度から,速度や変位を算出し,重力加速度成分等を取り除くなどの処理を施し,特徴量に対する適切なパラメータを設定して検討した。得られた結果と,切断面からみた切断のうまさやモーションキャプチャによる動作解析結果と比較しながら,モデル化の成否を確認した。その結果,本研究で提案した分析方法によって木材切断技能を定量的に評価できる可能性が示唆された。 次に,効果的な指導法の開発については,初心者約140名を対象として,自己学習型,教科書習得型,モデル化の成果反映型,教科書及びモデル化の成果複合型の4群に分け,学習効果を検証した。このとき,モデル化の成果として用いた指導内容は,切りはじめの姿勢と視線位置とした。その結果,モデル化の成果反映型群が一番切断をうまく行うことができたとする結果を得た。このことから,本研究で得られた木材切断巧緻性のモデル化を指導に生かすことは,効果的な指導法につながることが示唆された。
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