研究課題/領域番号 |
15K04440
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 吏志 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80610922)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 美術科教育 / 特別支援教育 / 全国調査 / インクルーシブ / 指導理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、美術科教育と特別支援教育の複合研究領域を創設することを目的としている。2年次は、1)特別支援学校における美術の実施実態に関する全国調査の分析、2)重度・重複障害児を対象とした造形活動の指導理論の構築、3)特別支援学校の教員を対象とした美術の指導に関する研修会の開催、4)iPadを用いたインクルーシブな集団での協同的な学習に関する題材の開発を行った。成果は次の通りである。 1)特別支援学校における美術の実施実態に関する全国調査では,分校を除く970校の各学部に在籍する美術の主任教員2909名を対象に質問紙を送付した。821名から返信があり,そのうち不備の無かった508名を分析対象とした。分析の結果,99%の特別支援学校・学部で美術の授業が実施され,週に平均1.83コマ(1コマの単位時間の平均は48.18分)の授業が行われていた。しかし,90%の教員は養成課程で障害のある子ども達を対象にした美術の指導に関する学習の機会を得ておらず,着任後の研修の機会もほとんどないことが明らかとなった。 2)継続的に取り組んできた、重度・重複障害児を対象とした造形活動の研究成果を博士論文『重度・重複障害児のQOLを高める造形活動の指導理論に関する研究』として著し、指導理論を体系的に示した。 3)特別支援学校の教員を対象とした美術の指導に関する研修会では、2)でまとめた指導理論を研修会で用い、題材開発のワークショップを行った。事後アンケートでは、知識、技能、応用の各項目で高い評価が得られた。 4)iPadを用いたインクルーシブな集団での協同的な学習を可能にする題材を開発した。逆再生されるアプリケーションを用いた映像制作を行い、国内では、10代から70代の参加者全員が協同的に活動可能であることが確認できた。また、国際学会でのワークショップでは、7か国からの参加者全員が協同的に活動できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、計画していた研究がおおよそ実施できた。実績として、論文、報告書等を、学会誌に3稿、紀要に1稿、研修会報告書に1稿公表できた。また、口頭発表等では、InSEA(国際美術教育学会)ヨーロッパ地区大会でのワークショップ、美術科教育学会での口頭発表、特殊教育学会でのポスター発表、特別支援学校教員を対象とした研修会、及び国内でのワークショップを実施できた。また、研究組織づくりでは、美術科教育と特別支援教育の複合領域を専門とする研究者や教員と研究組織を作ることができ、次年度の成果発表に向けた準備を進めている。しかし、海外の研究者との協力体制づくりは進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
3年次の課題は、次の2点である。1)美術科教育と特別支援教育の複合研究領域の創設に向けたシンポジウムを開催し、本領域の可能性を広く周知すること。2)国際学会、及び海外のジャーナルで研究成果を発表すること。
|
次年度使用額が生じた理由 |
全体としてほぼ予定通り支出できたが、11,557円差額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
シンポジウム関係経費の一部として使用する。
|