藍の生葉を用いて,たんぱく質系繊維の染色を幼稚園児から小学校低学年の児童を対象として行い学習意欲を高める教育について提案,実践を行ってきた。今年度は,小学校高学年から中学校で家庭科の教材とすることを想定して,被染色物を綿布とした。絹や羊毛と異なり,綿布は,取り扱いや管理が容易で,それを用いて作品を製作し,日常生活で使用できる利点がある。綿の染色の場合,アルカリ建てによって染色を行う必要があるが,アルカリ剤は取り扱いに注意が必要である。一方,鹿児島には,もち米を材料とした郷土料理の「あくまき」がある。そのため,灰汁が市販され,容易に手に入る。そこで,生葉の絞り汁に灰汁を添加した液で綿布を染め,簡便な方法で,より濃い紺色の染色物が得られる条件について検討した。綿布を濃く青色に染色する灰汁の量としては,染色液:灰汁が10:3である場合が最も適していた。 これまで,藍葉の栽培方法と保存方法,被染色物の種類,染色温度,染色液のpH,染色時間,乾燥時間,助剤について検討してきた。実験結果を基に,藍葉の染料としての利用期間を考慮して,発達段階と染色方法の難易の程度と発色のメカニズム等,知識・技能の習得の適正を考慮して次のような提案を行う。 蓼藍は3月~4月に播種し, 7月上旬の1番刈りが最も鮮やかな青に染まることから,幼稚園,小学校低学年の時期に播種から栽培を行い,生葉染めをする。1番刈りの収穫後3か月ほど2番刈りができることから,小学校高学年,中学校において灰汁を用いた綿のアルカリ建て染色と醗酵の説明,小物や被服の製作を行うことができる。保冷凍保存することで,時期を問わず,同異体の説明と共に加熱染色を高校で行なうことができる。藍の染色を通して,幼少期から自然に触れ,楽しみながら興味や意欲をもって,物事に対する科学的な視点を育む教育が構築できると考える。
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