平成30年度には,アンケート調査を実施し,中学・高校の接続性も含め,公民の経済分野でどのように教えるべきか検討した。また,模擬取引の実践例についても検討した。 まず,接続性について考察すべく,高校公民の学習内容との重複や差異について改めて確認した。また,過去のアンケート調査を確認し,実際に高校で何がどこまで教えられているかについて分析した。たとえば,ほぼすべての高校公民の教科書に記載される比較生産費説については,約4分の1の教員は教えていない状況にあった。数値表を用いて教えているケースは5割程度であった。 これらの状況も鑑み,中学校の社会科教諭を対象としたアンケート調査を実施した。全国から約半数の5000校を抽出し,質問紙を郵送する形で依頼した。平成28年度に中学校の教科書の部分改訂が行われ,それ以前の版から項目の入れ替えなどがあったため,平成28~29年度に公民的分野を担当した教員を対象とした(有効回答数1086件)。 たとえば,比較生産費説については中学校社会科では詳述されることがなかったが,平成28年度に数値表を用いて説明をするようになった教科書が出版された。しかしながら,その数値表をどう読み取るかの説明が少なかったため,どのように教えているか確認した。当該教科書を用いている教員(有効回答数160)のうち約半数の教員は教えておらず,また数値表を用いて比較優位を説明している教員は1割弱であった。これらは,当該教科書を用いてない教員と大差がない状況にあることもわかった。 模擬取引では,平成24年度の改訂での新出項目である「預金通貨の創造」について,高校公民での「信用創造」との相違もわかるように検討した。実際に生徒が銀行・家計の役割を担う形で取引を進めるが,聞き取り調査からは積・商が計算しやすいようにすべきであるという意見があり,数値例も考慮した実践について論文で公表した。
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