研究課題/領域番号 |
15K04459
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
上野 顕子 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20350952)
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研究分担者 |
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
星野 洋美 常葉大学, 教育学部, 教授 (50267845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多文化 / 共生 / 家庭科 / 食生活 / カナダ / 外国 |
研究実績の概要 |
文献・ホームページなどからの関係資料収集によると、文部科学省や各自治体は、就学に関するガイドブック等を掲載、配布していることを把握した。しかし、中学校技術・家庭科の授業展開におけるガイドブックや手引書は見当たらない。また、中学校技術・家庭科家庭分野の学習指導要領やその解説は、多文化共生について言及していないが、教科書では、地域に住む外国籍の人々との共生の概念が示されていることを確認した。 愛知県、静岡県、千葉県内の中学校における家庭科教員7名に実施した聞き取り調査からは、各学校での取り組みや課題が見えてきた。ブラジル、中国、フィリピン等から日本に来た生徒や、親が外国籍で日本で生まれ生活している生徒など、多様に外国とのつながりのある生徒たちを教えている実態が見えてきた。家庭科教員は、そうした外国とつながりのある生徒たちに対し、授業中のみならず放課後にも指導をしていることが分かった。また、被服製作実習には欠かせない裁縫道具を揃えられない生徒がいることが課題として挙げられた。一方、そうした生徒たちは、調理実習にはおおむね積極的に参加していることが分かった。 これらを受け、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州で、授業研究を実施すべく、昨年8月に、現地を訪れ、中学校教員3名と打ち合わせを行った。日本と比較すると、中学校段階での家庭科は選択科目の1つという設定である上、内容が食生活、衣生活に偏っている。しかし、授業時間数は、例えば「食物と栄養9」という9学年(日本の中学2年生)用の科目に約80時間が設定されていて、食生活に関する豊富な内容が扱われていることが分かった。生徒たちに自分自身や自分が関心をもった食文化を調査、発表させたり、そこから調理実習につなげたりという取り組みがされていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度に実施を計画していた2つの事項を達成することができた。1つは、日本での中学校技術・家庭科家庭分野の担当教員に実施した聞き取り調査である。これにより、日本の家庭科教育における多文化共生教育を実施する際の課題を抽出することができた。この成果は、2016年8月に韓国で行われる国際家政学会で発表することが確定している。もう1つは、2016年度に行うカナダでの研究準備である。研究打ち合わせのために、2015年8月にカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州を訪れた。研究協力予定者3名と会い、授業研究実施に向けての準備や手順について話し合った。また、カナダの家庭科教育の内容や近況を知ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度の研究実施に向けて、2015年度中に、研究実施申請書を提出したカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州サーリー地区教育委員会より、授業研究という手法は、州の新カリキュラムとそぐわないという理由から実施許可を頂くことができなかった。そこで、研究方法の修正が必要となった。授業研究は行えないが、カナダの家庭科教員複数から聞き取り調査への協力と授業見学の許可を得ることはできた。そのため、2016年5月に研究分担者2名と共にカナダに行き、フォーカスグループインタビューと授業観察という方法により、家庭科教育において多文化共生教育を実施する際の手順や留意点を明らかにする計画である。この結果は、日本家庭科教育学会で発表する予定である。 2016年8月には、日本の家庭科教員に行った聞き取り調査の結果を国際家政学会で発表する。 2016年度の終わりには、カナダから学んだことを元に、日本の中学校技術・家庭科家庭分野授業で利用可能な教材とそれをつかった授業の開発を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度中に行った国内インタビュー調査での専門的知識提供や調査補助に対する謝金が予定より少額で済んだ。研究会も他の研究費を利用して、経費削減に取り組んだ。また2016年度の調査において必要となる物品の購入、国際学会での発表に必要な諸経費の支払いが2016年3月時点でまだ行われていなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の調査において必要となる物品の購入、国際学会での発表に必要な諸経費の支払いに充てる。
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