研究課題/領域番号 |
15K04459
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
上野 顕子 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20350952)
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研究分担者 |
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
星野 洋美 常葉大学, 教育学部, 教授 (50267845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中学校 / 技術・家庭科 / 家庭分野 / 食文化 / 多文化共生 / 学習指導案 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年度に、カナダの中等教育学校段階で家庭科を担当している教員に行った聞き取り調査結果を基に、日本の中学校技術・家庭科家庭分野における多文化共生の視点を含む学習指導案と教材を作成した。カナダの調査では、「食の授業を通して、多文化共生をどのように教えているか」について、例えば世界に共通して存在するお茶や料理に使われるスパイスを取り上げ、その相違点と類似点を探るなどのアプローチにより多文化共生の視点で授業を展開していることが分かった。そこで、日本においても、「お茶から世界の食文化を考える」という題材名で、日本茶と世界にある他のお茶を比較し、そこから相違点と類似点を探る授業を考案した。この授業は、2017年7月と9月に、千葉県、静岡県、愛知県の中学校で実施した。その際、授業実施前後に質問紙調査を行い、教育効果を測定した。その結果、「生活文化の違いを受け入れること」「他の国の食文化を試すこと」「他の国の生活文化を学ぶこと」などについて、事前より事後に肯定的回答の割合が有意に高くなった。これにより、開発した多文化共生の視点を取り入れた家庭科の授業は、多文化共生意識を育むのに有効であることが明らかになった。この質問紙調査結果は、2017年12月3日に開催された2017年度日本家庭科教育学会例会において発表した。カナダの調査を基に、他にも学習指導案を考案したが、それらは授業実践にいたらなかった。 カナダでの調査結果は、2016年度日本家庭科教育学会例会において発表したが、同年度に論文執筆は行っていなかったため、2017年度におこない、日本家庭科教育学会誌に投稿した。2度の査読審査を経て、採択が決定し、2018年8月号に掲載予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度に実施を計画していた3つの事項のうち、2つを達成することができた。1つは、カナダの食文化に関する家庭科教育実践から学んだことを元に考案した学習指導案と教材を日本の中学校技術・家庭科家庭分野の授業で実施し、その効果測定調査を行ったことである。2つ目は、研究成果の発表を行ったことである。まず、2016年度に行ったカナダでの調査結果を論文としてまとめ日本家庭科教育学会誌に投稿し、採択された。また、日本の中学校技術・家庭科家庭分野での授業研究については、2017年12月に開催された日本家庭科教育学会2017年度例会において口頭発表を行った。3つ目は、3年間の研究成果を元に、家庭科教育における多文化共生教育実践のための手引書を作成し、関係教育機関等に配布する計画であった。しかし、研究協力校で授業進行に遅れが生じたことで、本研究対象の授業実施時期の調整が困難となり、秋にずれこんでしまった。一部の成果は、日本家庭科教育学会2017年度例会において発表できたが、手引書を作成し、関係教育機関等に配布するという計画は実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、以下3つの事項を実施予定である。1つは、カナダの食文化に関する家庭科教育事例から学んだことを元に別の学習指導案と教材を考案し、日本の中学校技術・家庭科家庭分野の授業で実施し、有用性を確認することである。2つ目は、研究成果の発表を行うことである。まず、2017年度に実施した中学校技術・家庭科家庭分野での授業研究結果のうち未発表部分を2018年7月に開催予定の日本家庭科教育学会第61回大会においてポスター発表をおこなう予定である。3つ目は、3年間の研究成果を元に、家庭科教育における多文化共生教育実践のための手引書を作成し、関係教育機関等に配布することである。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究成果のすべてを2017年度に発表し終えることができなかったためと、家庭科教育における多文化共生教育実践のための手引書が作成できなかったためである。 そのため、残りの額は、主に研究成果発表のための旅費と、手引書の作成代及び配布にかかる郵送代に使用する計画である。
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