本研究では「算数用語」を用いたプログラミングが,図形概念の認識過程にどのような影響を与えることができるのかについて,学習過程を通して,実証的に示した。プログラミングをするための教材は,単元や場面ごとにコンテンツにする方法によって,児童が使用する命令だけを画面上のボタンに置いた。また,命令が実行されるときには,「言語」と「図」が同時に逐次表示されることで,両者の繋がりの理解を促すようにした。また,図形概念の認識過程にプログラミングがどのように関わるのかについては,川嵜(2005)のモデルを基盤として,図形認識の水準とプログラミングの水準の関係を示してきた。 単元内の算数の授業としては,2019年1月に,2年生に1人1台のタブレットパソコンを用いて,プログラミングをさせ,図形概念の形成を促進させるための実践研究を行った。「長方形」を描くために,画面のボタンをタッチすることでプログラミングが出来る教材をあらかじめ研究者側で作成した。児童は,「辺は ○」,「直角にまがる」,「けす」など,1命令ごとのプログラミングによって,長方形を描画した。その過程で,長方形の向かい合う辺についての性質を発見し,直角が4つあるという定義を確認した。また,多様な形の長方形の描画を行い,イメージを多様にした。2019年9月には,三重大学と連携する「ジュニアドクター育成塾」において,小学校5年から中学校3年の6名に対して,タートル幾何による正多角形描画と,それを発展させた分数正多角形描画,および,そこで何を発見するかについて実践検証をした。正多角形の,変数を用いたプロシージャ作成は,外角の和が360°である気づきから,自然に行えた。さらに,分子と分母の数値を2変数にした分数正多角形のプロシージャを作成し,数値やその関係によって,描かれる図が変化する決まりを見つける探究活動を行った。
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