研究課題/領域番号 |
15K04466
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
木村 惠子 広島修道大学, 人文学部, 教授 (80610534)
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研究分担者 |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40303193)
渡邊 慶子 (向井慶子) 滋賀大学, 教育学部, 講師 (00572059)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本型算数教育 / 生活算術 / 算術教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本型算数科授業の特徴を歴史的視座から抽出し、算数科教育がこれまでどのような授業を目指してきたのかを歴史的アプローチにより捉え直し、現代の授業研究における授業改善の議論の方向付けを明確化することである。 現在の日本の算数科授業はレッスンスタディとして海外に紹介され、近年でも海外の研究者による論文で、詳細に実践授業研究の事実を伝えられているが、それでも日本型算数科授業の特徴を表すには十分ではない。それは日本型算数科授業の背景にある教育思想や教育方法が述べにくいことによる。我が国が明治期から大正期にかけて海外の数学教育方法や数学教育思想を移入した際、現代のレッスンスタディを受け入れている諸外国と同様に、移入した思想や方法は社会的諸条件に合わせてそれまで国内にあった数学教育思想と折り合いをつけながら、教師の意思や教科の概念等を実現しようとした指導的な算術教育実践家によって、個々の教育実践の中で具体化されたと考えられる。 生活算術期の系統的史料は多くないが、新教育運動の算術科への発現として黒表紙教科書第三期改訂版の時期に着目すると、大正末期から昭和初期の生活算術運動における指導的実践家の授業記録の中には、生活に役立つ使える算術を児童の身につけさせるために、児童生活への指導内容の浸透を追求した実践がある。これには黒表紙教科書のもつ算術観の授業への具体化として個別の教師による1時間の授業モデルが見られる。実践家の授業実践の一例を挙げると、生活や遊びの場面を絵画で見せ、絵画中で数に関係する話をさせたり、事前に課題を出して調査研究をさせたりして、生活にある算術場面を掘り起こす。その後、授業で対象となる生活場面に関わる演算場面をつくり問題を解決する。解法の典型例を選び適用題の解決をする。このようなパターン化を通して生活での利用を意識した授業実践をしようとする特徴がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半の計画である黒表紙教科書の授業の史料収集と特徴抽出について事務手続き上の関係で開始時期が遅れたため研究期間は圧縮されたが、おおむね前期の計画は予定通り終了できた。9月より在外研究の機会を得て米国に滞在していたため、後期の計画である四則演算に関する日本の授業実践に関わる研究グループ会議及び授業観察と協議の時間確保のための帰国ができないので実施を次年度に回し、次年度前半の史料収集及び海外文献を含めた文献研究の一部を先取りすることにした。授業実施は帰国後実施する予定である。米国ではデポール大学の高橋昭彦先生によるレッスンスタディの取り組みを観察研究することができた。教師の指導案検討会や授業協議会にも参加する機会を得たので、教師の質問や発言に対する高橋先生の返答やコメントにより、教師の疑問や関心の所在を知ることができ日本型算数科授業の特徴を考えることができた。このことから新しい概念知識を取り入れる際の困難や課題は個々の教師のすでに持っている算数観に関わりが深く、その思想が概念化されているほど抵抗が大きいのではないかということと、教師が新しい概念を受け入れようとするときには社会的な要請に応えようとする意思が必要で、社会的な環境を見過ごすことはできないことを知ることができた。これは、黒表紙教科書のもとで実施された生活算術の実践授業記録の特徴を考察する際に、教師の算数観が関係していそうだと想定していたことと一致する。また、当時の社会情勢の変化に対応しようとした教師の意思ともよく似ている。2月よりイギリスエクセター大学に移動し、歴史研究のメソドロジ-及び日本のレッスンスタディについての海外での評価についての研究をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前期は8月末までイギリスエクセター大学で研究活動を続ける予定なので、帰国後、黒表紙教科書の特徴と日本型算数授業を比較検討するための授業実践と授業観察を実施する予定である。日本型算数授業の原点と言われる緑表紙教科書について、これまで緑表紙教科書の特徴について、さまざまな研究がなされている。これらは、緑表紙教科書の主張を分析し、その主張や教材の価値を論じているものが主で、その教科書による実践への関心は高くない。後期は緑表紙教科書を使った授業実践から得た授業の特徴と、現在の日本型算数科授業の特徴を「割合」の単元で比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、8月より在外研究の機会を得て国外で研究していたため、今年度打ち合わせ会を国内でもつことができず、主にメールでのやりとりと学会出張の折の連絡調整で進めてきた。そのため、打ち合わせ会開催のための旅費や会場費が必要なくなり残額として残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降で予定通り国内での打ち合わせ会を実施する予定である。また、研究用にレッスンスタディに関わる洋書について購入の必要がでてきた。繰越金は次年度その購入に充てる予定である。
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