研究課題/領域番号 |
15K04480
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
甲斐 雄一郎 筑波大学, 人間系, 教授 (70169374)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東アジア / 論語 / 伝統的な言語文化 / 古典化 |
研究実績の概要 |
本研究は中国、台湾、韓国、そして日本という東アジアの国や地域の中等学校において「論語」が共通教材として用いられていることに着目した。そして「論語」学習の一端としての、随筆作成・交流を通しての相互理解を深めるとともに、当該国や地域における古典学習意欲の向上を目指し、伝統的な言語文化への習熟を目指そうとするものである。そしてそのことを、日本の中学校高等学校において言語文化としての古典を未来へつないでいく古典化としての営みとして考えている。 研究二年目としての28年度は、「論語」に関するさまざまな解釈の類型、当該国・地域の教科書について昨年度に引き続いて継続して蓄積するとともに、古典や作文に関する教育課程や具体的な授業方法について情報収集を行うことができた。さらに中国浙江省や上海・北京の訪問を経て、次年度以降の研究計画について討議した。 具体的には6月に中国・浙江省の浙江師範大学および台州学院を訪問し、当方が行った言語教育に関する日本の教科書の構成に基づく報告を前提として、意見交換とともに次年度以降の研究計画について打ち合わせを行った。11月には華東師範大学、北京師範大学を訪ね、前者とは今後の研究計画についての打ち合わせを行い、後者に対しては提供していただいた中学生作文についてとりまとめた中間の報告書に基づいて、研究内容についての討議を行った。また、この間、来年度以降に浙江省内の高等学校訪問・取材の予定を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論語に関するさまざまな資料の入手と読解を通して論語解釈の動向について理解を深めた。中国における古典教育、および作文教育について、言語教育大学教員より教示を得た。また、生徒作品の収集が重要な課題となるが、そのことについても特に中国においてある程度の見通しがたったため、当初計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
日本における中学生の、論語をめぐる随筆を収集するとともに、検討対象とする中国、台湾における中学生の作品を収集、翻訳することを試み、それらの分析を通して、それぞれの国や地域における受け止め方を確認する。あわせて日本を含む東アジアの中学生(高校生)による論語をめぐる随筆について、それぞれの章句、また上記の分析結果に基づく枠組みに即して編集し、教材集として作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本補助金を用いて渡航するはずだった浙江省内の二大学については先方の交流事業として支出されたため、当方の費用負担は通訳として同行した留学生分のみとなった。また、華東師範大学(上海)、北京師範大学(北京)についても研究打ち合わせを行うことができたが、それは勤務校からの出張にあわせて行うことができたため全体的に効率のよい運用ができ、本補助金からの支出を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
精力的な研究打ち合わせにより、2017年は相当数の作品の入手の見込みがたったため、その翻訳等に関連した謝金として用いるとともに、成果を印刷するための資金として使用する予定である。
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