研究課題/領域番号 |
15K04489
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
村松 俊夫 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00262642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教材開発 / 教育遊具 / 触知による教育 / 美術科教育 / 基礎デザイン教育 / 図形科学教育 / 形態構成 / 数理造形 |
研究実績の概要 |
従来、理科(物理)教育や数学(幾何学)教育と美術(造形)教育は、遠くかけ離れたものという認識が一般的であった。しかし近年、総合的学習が学校教育全般にいきわたり、教科の枠組みを外した横断的な内容が教授されるようになっている。これまで教材自体に当初から3教科分野の内容を教授できる教材を開発し、保健体育的内容も体験的に理解できる遊具として提案を続けてきた。今回、ここまでの研究で得られた新たな知見を取り入れ、普通教育においてもさらに分かりやすく教授できる教育遊具を開発しようとするものである。 平成27年度では、平成25年度の研究過程において派生的に生成した「Tri-Sphericon」によって得られた知見「奇数正角形の回転体によるスフェリコン」の可能性をさらに確認するため、「正5角形スフェリコン」を開発した。完成させた試作は各種展示会に出品し鑑賞者の反応等を調査した。 平成28年度は、「正6角形ハイブリッドスフェリコン」(正6形の対角線を軸とする回転体と、向かい合う2辺の中点を軸とする回転体の2つを想定し、それぞれを軸に沿って2等分した半分を60°ずらして得られる円錐面と円柱面が連続する立体)において「往復運動のための両端平面曲面化」を実施し、大型の遊具として開発した。 これまでの研究で留意した点は、スフェリコンならびに円柱側曲面の接地線を抜き出したとき、重心が偏ることをステンレススチール球のカウンターウエイト(おもり)により防ぐことであった。今回もCAD図面に落とす前の検討図をもとに様々な位置の検討をおこなったが、この形態の場合、図面上重心の偏りが発生せず、ステンレス球によるカウンターウエイトを装着する必要がなかった。完成した作品を実際に転がしてみたが、ウエイトのある試作と比較して幾分早く減速運動に入るものの、不自然な動きとはならないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初28年度で計画していた「正4角形(正方形)スフェリコン」(正方形の対角線を軸とする回転体と、向かい合う2辺の中点を軸とする回転体の2つを想定し、それぞれを軸に沿って2等分した半分を90°ずらして得られる円錐面と円柱面が連続する立体)の研究制作が完了しており、「往復運動のための両端平面曲面化」が実現しているため。また、「ハイブリッドスフェリコン」の研究においては、これまでの研究成果で得られた知見をもとに制作を実施し、モックアップ(模型)のプロセスを経ずに大型の遊具としての開発が終了したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年次は、新たな往復運動触知型教育遊具に発展すべく、引き続き「ハイブリッド型スフェリコン」と「奇数正多角形スフェリコン」の構造をステンレススチールパイプにより制作し、あわせてその動きならびに軌跡も検証する。 「奇数正多角形スフェリコン」では、すでに具現化している「正5角形」の次の「正7角形スフェリコン」を模型により検証する。「正7角形スフェリコン」の場合では、「正5角形スフェリコン」と同様に、2等分した片方をずらす角度によって生成される構造が異なることが予測され、2種の角度によって、どのように動きと軌跡が変化するのかを確認する。また、角数が多くなるに従い、いわゆる球体(Sphere)に近くなるため、転がる軌跡も長距離になる。これについても実証的に検証する。 「ハイブリッド型スフェリコン」では、28年度に作成した「正6角形スフェリコン」の生成過程において、これまで知られていなかった等高重心立体構造の可能性が得られた。この新たな形態の構造模型を作成し、その動きを検証する。 これらの研究結果をもとに、特徴的な形態を、ステンレススチールパイプによる触知教育遊具の試作品として制作する。各種展示会等に出品し、往復運動させた場合の動きの状況観察や鑑賞者からの反応・意見等の聞き取り調査をおこない、それらをもとに口頭発表、論文発表もおこなう。
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